信州読書会 書評と備忘録

世界文学・純文学・ノンフィクションの書評と映画の感想です。長野市では毎週土曜日に読書会を行っています。 スカイプで読書会を行っています。詳しくはこちら → 『信州読書会』 
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カテゴリー:邦画

2013年06月15日

俺にさわると危ないぜ

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★ あらすじ
カメラマンのマイトガイがキャビンアテンダント松原智恵子と出会う。
松原智恵子の亡き父親は旧陸軍幕僚で、沖縄の民間人から巻き上げた金塊を
どこかに隠したままである疑惑があった。


金塊の在り処を探す暴力団が、松原智恵子を誘拐する。
沖縄出身のブラックタイツ団とマイトガイが三つ巴の戦いを繰り広げながら
松原智恵子の行方を捜す。はたして金塊の在り処は?




★ 感想
エログロナンセンスが渾然一体となった60代日活作品。
長谷部安春がはじめてメガホンを取った作品ということである。
DVDでは、特典として長谷部監督のインタビューがあるらしいが、
私はビデオで見たので、観られなかったのが残念でたまらない。



当時のヒット作『007』のパロディーをやっているらしい。
ブルース・リーのカンフー映画のパロディーである千葉真一主演の
『直撃地獄拳 大逆転』をはじめて観たときの印象に近い。



どういうことかというと、当時パロディーされた元ネタを知らないだけに
この作品の『007』のチープなパロディーに過ぎない部分が、
今改めて観てみると、アバンギャルド!!
と錯覚させるような歴史的倒錯をかかえているということである。



それよりも、今でも松原智恵子が大好きな私としては、
彼女が『昼顔』のカトリーヌ・ドヌーブばりに、縛られて下着姿にされて
顔じゅうに白いペンキをスプレーされているシーンはショックだった。
ひどいことするなあと思いつつも、見入ってしまった。
しかし、あんなきれいな女優に、そういうことをしちゃいけない、と思う。
葛藤を抱きつつも、私の中のハードボイルドな部分がそう命じた。


マイトガイのコミカルな演技のぎこちなさがキムタクそっくりである。
テレビCMにでてコミカルなことをしているキムタクみたいだった。
いや、もっと正確に言えばシュールでコミカルな状況に巻き込まれて、
ハニカミながらとまどうキムタクみたいだった。なんか、下品。媚びてる。
あんなにクールなマイトガイが、下品なハミカミを演じていて、ガッカリ。

マイトガイやキムタクを、おもちゃにして、喜ぶ演出家の安易な想像力は
客をなめきっているとしか思えない。こういうのを勘違いという。不愉快。

ゆえに、この初監督作品の後、長谷部安春は1年以上仕事を干されたらしい。
いまだったら考えられないが、当時はまだ良識があったんだと思う。
でも、オープニングの爆撃シーンの花火はとてもよかった。
ジャケットのマイトガイが長井秀和みたいである。


俺にさわると危ないぜ [DVD]

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posted by 信州読書会 宮澤 at 14:45| Comment(0) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

南国土佐を後にして



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★あらすじ
ダイス賭博で下獄していたマイトガイ(小林旭)は、刑期が明け、
未亡人の母と恋人ルリ子待つ故郷の土佐へと戻り、
天才的なダイス賭博の技術を封印し、堅気として出直す決意をする。

しかし、ルリ子は死んだ父の借金100万円のせいで、
金貸しのチンピラ内田良平と結婚するはめになっていた。



内田良平は、ルリ子が、未だにマイトガイに心寄せているのに嫉妬し、
マイトガイの前科を暴いて就職活動を邪魔する。


前科者ということが知れて就職できないマイトガイは、
母親さえ養いない身のふがいなさを倦んで、職を求め再度上京する。
特攻隊で戦死した兄の婚約者である南田洋子の経営する待合に身を寄せ、
就職活動を再開する。南田洋子は昔の恋人の面影をマイトガイに見て尽す。



しかし、マイトガイは南田洋子の妹、中原早苗に好かれて、
またまた就職活動を妨害される。


そんなおり、ルリ子がマイトガイを追って上京してくる。

ルリ子を追いかけてきた内田良平に、今晩中に100万円返済しろと迫られ、
マイトガイは、仕方なく賭場に出かけ、金子信雄相手に奇跡的な勝利を上げ100万円を作る。

100万円渡したついでに、内田良平とその一味をボコボコにする。
明け方、マイトガイはルリ子との結婚をお預けにして別れ、去ってゆく。




★感想


森進一の『おふくろさん』事件で最近フィーチャーされた故川内康範原作、脚本。
『渡り鳥シリーズ』の原型となった作品である。監督は齊藤武市。1959年公開。

いや、かなりいい映画で、魅入ってしまった。



マイトガイがテーブルに並べた5個のダイスワンシェイクで
拾って、振って縦に立てるシーンがあるのだが、
これが、なんとすばらしいことに吹き替えなしのマジ演技である。




マイトガイの自伝『さすらい』(新潮社)によると、2テイク目で成功し、

あまりに驚いた西村晃と二本柳寛はセリフを忘れたという。
ふたりが素で呆気に取られているのがそのまま使われている。


そのほかにも、南田洋子のお座敷での踊りとか、(南田洋子がきれいだった)


ダイスでオール6を出した後の金子信雄のとぼけきった表情とか
中原早苗の『ジョージさんきっとお姉さんを好きになってしまう』というセリフとか


いろいろと心に残るシーンがあった。川内康範の脚本はかなりすばらしい。

だが、やはりなんといっても狂気の博徒と化したマイトガイが
ペギー葉山の歌う『南国土佐を後にして』を止めさせ

オール1を出して、去ってゆくシーンが感動的。
マイトガイのどうしようもない孤独に涙した。

堅気になり母親孝行しようとして、苦労したにもかかわらず、故郷から疎外され、
前科者として生きざるを得ないマイトガイに私は感情移入しっぱなしである。


ラストで、マイトガイがルリ子に「まだ行かなきゃいけないところがある」といって
別れを告げるのだ、のんきな私はただ単に、どこかに旅にでるのかと思っていた。


実際は、主人公は警察に向かって去っていったということである。
『さすらい』でマイトガイ自身が、そう述べていた。

そうなのか!! と私はビックリするとともに、自分の不見識に恥じた。

あれは自首したんだ。とおもうとラストは鮮烈である。
そんな救いのない結末だからこそ、マイトガイのラストの笑顔が眩しい。

あと、案外、自分が情にもろいことを再確認した。

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タグ:小林旭
posted by 信州読書会 宮澤 at 14:40| Comment(0) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

赤い夕陽の渡り鳥


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★あらすじ
温泉の湯元をめぐる利権争いにマイトガイが巻き込まれる。

★感想
渡り鳥シリーズ第4弾。適当に借りたので第4弾になってしまった。
元衆議院議員の原健三郎原作。


この作品は、宍戸錠のインパクトが強く、マイトガイが冴えない。
しかし宍戸錠の頬がキ○玉のふくろみたいで実に卑猥である。
その上、椿三十郎みたいに顎鬚をさする。のみならず鬚を抜く。
あれだけ卑猥な顔のヒールというのもなかなかいない。

マキのダンスを観ながら、記憶の糸を手繰る
宍戸錠の表情の気持ち悪さがたまらない。

ルリ子はお嬢様の役である。


一つ苦言を呈するとすれば(偉そうに…)
こういうお嬢様が出る場合は、執事か、小間使いをその脇に従えるのが
劇作のお約束のような気がするのだが、そういう人物がいないので、
ルリ子が、無防備なまま暴力に晒されており可哀そうであった。


「人に頼られる。それが嫌でまた流れる」とマイトガイがルリ子に弱音を吐く。
そのシーンにスターの悲哀を感じて結構グッとくるものがあった。



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タグ:小林旭
posted by 信州読書会 宮澤 at 14:33| Comment(0) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夫婦善哉

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織田作之助の『夫婦善哉』の映画化。監督、豊田四郎。1955年公開。

★あらすじ

船場の問屋の放蕩息子、柳吉は、芸者の蝶子を囲った為、


父からを勘当される。病床にあった柳吉の妻は、
一人娘のミツコを残して死去。
柳吉の父は、婿養子をとって家を継がせ死去。


居酒屋やカフェを経営するも、心労から柳吉は腎臓を患い
献身的に看護する蝶子は、自分を捨てて去っていきそうな
柳吉の裏腹な態度に傷き、とうとう自殺未遂する。
あともどりできなくなった柳吉が、実家への未練を断ち切り
腹を固め、蝶子と手をつなぎ、小雪ちらつく往来を歩いて終り。


★感想
原作は昔読んだが、さっぱり忘れた。本棚を捜したが見つからない。
確か数年前に『夫婦善哉』の続編の遺稿が発見されたとかで
話題になっていた気がする。  



陰惨な話であるが、関西弁のセリフの語尾で
すべてが笑いとばされていて、人情喜劇になっている。


森繁久彌の代表作であるそうだが、
森繁演じる柳吉の存在自体がミステリアスである。
実際、何を考えているかよくわからない。


言動はいい加減で、およそだらしなく、変な色気はあるが色男でもない。
ただ単に、あまったれたわがままなボンボンの役柄なのだが、
それだけだったら、林家いっ平でもリメイクできるだろう。
なのに、森繁の演じる柳吉の演技のいい加減さに、まったくスキがないため、
かえって、えたいのしれない凄みを、錯覚させる。


要するに、森繁の存在が、一見平凡なわりに、ミステリアスである為、
対照的に、淡島千景が、非常に健気でいじましい片恋の女に見えようになっている。
よって、一種の探偵小説的な結構をもっている。
主人公であるはずの森繁には、探偵の遊戯性があり、(ことに美食家というところなど)
事件に関して終始、傍観的である。ドラマを生きていない。


逆に主体的に、女の幸せめがけて、事件のさ中を生きているのは蝶子役の淡島千景である。
彼女は終始ドラマチックで、柳吉が好きで好きでたまらず、ガス自殺を試みる。
彼女が、共感を集めるからくりはそんなところだ。
恋愛小説というのは、つきつめると探偵小説に似てくる。
織田作之助は『可能性の文学』という小論で、
志賀直哉を頂点とする日本の一人称心境小説を攻撃して
スタンダールのような三人称の活劇小説の復権をとなえていたが、
そういう意味で『夫婦善哉』はその実践という感じがする。


物語の展開が早いので映画化しやすい作品である。
実際、オールセットで撮影されており、非常に美しい。
そして、話の筋もなにもかもオールセットのつくりものめいた匂いがして
物足りなさを感じるのだが、同時に贅沢でもある。


私は、森繁のエッセイをことあるごとに収集していて、
4冊持っているのだが、すべて未読である。
この映画をきっかけに読んでみようと思った。

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posted by 信州読書会 宮澤 at 14:23| Comment(0) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

社長太平記






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★あらすじ
太平洋戦争で海軍二等兵だった牧田(森繁)は、
戦後、婦人下着会社の錨商事一族の婿養子となり社長に就任する。

巡洋艦の艦長だった朝比奈(加東大介)を総務部長、
下士官であった大森(小林桂樹)を専務という具合に、
かつての自分の上官を会社に招き入きいれ、
大手デパートの婦人もの仕入担当、間(有島一郎)を
篭絡するために、夜の接待を重ね、
いいくらかげんに、ライバル会社としのぎを削る。


最後に、錨商事の工場が火災にあうが、
加東大介の陣頭指揮により会社は窮地を免れる。

★感想
実は植木等の『ニッポン無責任時代』と並行してみたため、


混乱してしまい、あらすじをよく思い出すことが出来ない。
とくに由利徹がどっちにでていたかわからなくなった。
松林宗恵監督。笠原良三脚本。1959年公開。


社長シリーズとして20作以上製作されている。
基本的に森繁は、狂言回しに徹しており、周りの俳優の演技を


全部うけきって、映画全体に森繁のリズムというべきものを生み出している。
ただ、御大は自然な小芝居を、カットの切れ目切れ目に入れてくるので油断ならない。
なので、見ていて飽きない。かなり面白くて、全シリーズ観たくなった。



まあ、この映画を観た後に、昔読んだ小林信彦の『日本の喜劇人』の
第三章『森繁久弥の影』を読み直してしまった。
森繁という存在の新しさと、後進への多大な影響を論じた小論である。


小林信彦の批評は、個人的な好悪を、ハッキリさせすぎるためか
フェアな感じがしないのと、玄人ぶった自惚れともったいつけがあって、
正直、読んでいて、うんざりするし、懐古趣味がなければ、読後もただ不快である。
この人は、喜劇の見巧者として自分の大半をアイデンティファイしていて、
その自負というものにつき合わされるのは、読者としてシンドイものがある。


ただ、脇役で出ていた、三木のり平や有島一郎、山茶花究のことなども
かなり突っ込んで書いているので、知識欲は一応満たしてくれる。
三木のり平が、下着姿で踊るところや、有島一郎がカンカンを踊るとこなど面白い。



映画の冒頭、二等兵時代の森繁が、飯を喰うのが早すぎて、下士官小林桂樹
員数をつけられ制裁を受けかけ、艦長の加東大介に救われるシーンがあるのだが、
これがあるからこそ、戦後のヒエラルキーの逆転が明瞭になり
森繁の社長としてのいかがわしさが一層、際立つ。このシーンだけでも見る価値がある。

DVD特典に松林監督のインタビューがあり、森繁を絶賛している。



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タグ:森繁久彌
posted by 信州読書会 宮澤 at 14:22| Comment(0) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

縄張はもらった

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縄張はもらった [VHS]

★ あらすじ
8年の刑期を勤め上げて出所した寒河江(マイトガイ)は、
所属する一文字組が看板を下げ、老いた親分が、新興暴力団狭間組の
世話になりながら入院生活しているのを知る。



狭間組の組長は、出所してきたマイトガイに目をつけ、
工業地帯の予定地であるX市の制圧するよう頼む。
制圧したあかつきには、その縄張をマイトガイに譲り、
一文字組の看板をあげさせてやるというのだ。



どう考えても、いいように利用されているとしか思えないマイトガイだが、
単純なのかお人よしなのか、やがて裏切られることを察知せず、
親分の入院費のお礼にと、無理難題を引き受けてしまう。


しかし、X市はすでに、遠野一家と青葉会という二大勢力が拮抗していた。
そこへ、第三の勢力として参入するべく、マイトガイのもとに、
新城(チョビ髭のない藤竜也)、マイトガイに熱烈に忠誠を尽くすお馴染みの郷エイ治
ギターの流しの川地民夫と、渡り鳥シリーズからスライド登板の宍戸錠ほか
特殊技能を持った面々が集められ、その目付け役を狭間組の二谷英明が担当。


こうして『七人の侍』チックに、集団活劇というか、グループヒーローものとして物語は進むが、
マイトガイのカリスマ性が十全に輝きすぎて、結局はみんなが献身的に犠牲にならざるを得ない。
よってみんな、ひどい目にあって死んでいく、特に藤竜也は潜入スパイとして壮絶な拷問をうけ死す。


ついに遠野一家と青葉会を相打ちにさせる計画を成功させ、マイトガイは漁夫の利を得るように
工業地帯予定地を農家の人々から巻き上げ、転売して儲けてX市を完全制覇する。



しかし、マイトガイがフロント企業として建設会社(旭日総業ではない)を設立したことが、
狭間組会長の逆鱗に触れ、会社ごと巻き上げられてしまう。


ついには、命まで狙われて、梶芽衣子がマイトガイの身代わりとなって射殺される。
激昂したマイトガイは、川地民夫と宍戸錠をつれて狭間組本部に殴りこみ
組員全員を、いつもどおり日本刀と短刀でむやみにふりまわし
惨殺するも、自らも宍戸錠とともに重傷を負って、完。


★感想
監督は、『俺にさわると危ないぜ』の長谷部安春。1968年公開。
脚本は、その後、『現代やくざ 人斬り与太 』を手掛ける石松愛弘。
よって、観るものを不快にさせる演出過剰が激しく、
その後の、日活低迷を予兆させる問題作である。



ただ、長谷部監督の演出は、ここでも斬新で、カット割は凝りまくっている。
一例として、物越しに、人物をとらえるカット割が異様に多い。


野心的な試みとしては、マイトガイをグループヒーローものに押し込めて、
渡り鳥シリーズのフォーマットを切り崩そうとしたことだろう。
この試みにおいて、この作品が近年の再評価が高まっていると、どっかで読んだ。


しかし結局、反目していたマイトガイと宍戸錠が徒党を組みラストになだれ込むことで
グループヒーローものとしては不完全になり、渡り鳥シリーズのラストと変わらない。
だもんで、再評価云々は、たぶん、感傷的な誇張である。



あえて極言すれば、『仁義なき戦い 代理戦争』で武田明として東映に移るまで、
マイトガイはグループヒーローとして納まることはなかったのである。そんな器じゃない。


ついでに『頂上作戦』で千葉眞一の代役となったことで宍戸錠は、永久に躓いた。
あのあたりで、マイトガイも宍戸錠も東映の軍門に降った感がある。


ただ、藤竜也が、遠野一家で客分として仁義を切り
「おひかえなすって、おひかえなすって」と禅問答のようなやりとりを


玄関先で繰り広げるシーンは、かなり見ごたえがあり、思わず息を飲んだ。


あと、日活やくざものを観ているうちに、私は郷エイ治と川地民夫のファンになった。

日活の郷エイ治、東映の渡瀬恒彦。私の番付ではそんな感じである。


しかし、郷エイ治は今なにをしているんだろうか、健在なのだろうか、気にかかる。



マイトガイが梶芽衣子と絡んだことで、その後の『日本最大の顔役』という
なかなかいい映画につながったことに、強いて言えば貢献している映画でもある。
しかし、太田雅子時代のうら若き梶芽衣子が無意味にポロリしていて、惨い。


出目徳こと高品格も、なかなかの存在感を醸しだしていた。

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タグ:小林旭
posted by 信州読書会 宮澤 at 14:16| Comment(0) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

コミック雑誌なんかいらない!


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★あらすじ
芸能人突撃レポーターのキナメリ(内田裕也)は、
「恐縮です」を枕詞に数々の突撃取材を敢行し、嫌われている。


やがて、ワイドショーから干されて、深夜番組の風俗レポーターに
成り果てて、山本晋也の向こうを張る。


たまに後楽園球場で投げるシーンがシュールに挿入される。
ロス事件や山口組の抗争事件、日航機墜落事故など80年代前半の大事件と
おニャン子ブームや松田聖子結婚など芸能関係の話題と日本の風俗が描かれ、
ビートたけしによって豊田商事社長の刺殺事件が再現されて終わる。





★感想
1986年公開。内田裕也企画、脚本。滝田洋二郎監督。


内田裕也のセリフが棒読みで、違和感があるのだが、
感情に抑揚の無い演技に、徐々に引き込まれてしまった。


内田裕也の繊細で不器用な姿に、圧倒される。
山口組事務所と、ロス疑惑の三浦和義の突撃レポートは、
たぶん、やらせなしの本番であると思う。ドキュメントっぽい。
マイケル・ムーアにも影響を与えている。うそ。


取材中に内田裕也がキレると、瞳孔がかっと開いて怖い。
さらに、全身が興奮と緊張で痙攣していて痛ましい。


キャストが、当時としては豪華で、
原田芳雄、安岡力也、桑名正博、村上里佳子、殿山泰司
片岡鶴太郎、渡辺えり子、ビートたけしなどが出ている。


しかし、こう並べていると、今さら豪華でも何でもないに気がつく。
ただ、当時勢いのあったフジテレビ系の人々がキャスティングされている。



ビートたけしによる豊田事件の再現の演技は神がかっており、
暴力的な演技をさせると、やはりたけしはとんでもない才能がある。


そこだけでも、見る価値はあると思う。


ヴェンダースの『東京画』から厚田雄春のインタヴューを除いた部分と
同じ臭いのする、80年代の虚しい日本の風俗を描いた映画。


脚本は、めちゃめちゃで、これといった筋はないのだが面白かった。
最終部分の内田裕也の“I can’t speak fucking Japanese”というセリフにあふれる
珍奇なハードボイルドが、どうしようもなく、ダサく、切なく、いとおしい。


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タグ:内田裕也
posted by 信州読書会 宮澤 at 14:14| Comment(0) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

唐獅子警察


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1974年公開。中島貞夫監督、脚本、野上龍雄、主演、小林旭。
かわぐちかいじの劇画が原作だそうである。


舞浜の漁村で生まれた異母兄弟が、(小林旭と渡瀬恒彦)が
大都会大阪へと出て、極道となって対立するという
カインとアベルというか、エテオクレスとポリュネイケスのような
兄弟葛藤を軸としており、実録路線の東映ヤクザ映画としては珍しく
ギリシア悲劇のようなクラシックな構成となっている。


展開も早く、エピソードも無駄がない。脚本がすばらしい。



★感想
小林旭が、「極道になった以上、親父は組の会長、お袋は姐さんだ」といい切り、
酔っ払いで世間の笑いものだったどうしようもなかった実の親父の全否定し
田舎で不貞腐れて暮らす渡瀬恒彦にもう義理はないと凄むシーンに迫力があった。


ピラニア軍団も多数活躍しており、
けっして集団として描かれて終わりというわけでなく
それぞれソロシーン、というか思い入れたっぷりに
刺されたり撃たれたりするので
川谷拓三や志賀勝、曽根晴美が好きな人にはたまらない。


特に、室田日出男の電工ペンチでの感電シーンは壮絶である。



ただ、志村喬がなぜか、ヤクザの会長役で出ているのだが、
もしかしたら演技が下手くそなんじゃないかと錯覚するほどの
ミスキャストぶりである。世界のクロサワ映画では、
あのとつとつとした語り口が、この上なく魅力なのだが、
怒号飛び交う東映ヤクザ映画で、あの語り口は、説得力がない。


ただに痛ましいだけであった。


『キッズリターン』で、下條正巳がヤクザの親分を演じていたのと同等の痛ましさである。



あと、マイトガイのソリコミが、青みがかっているシーンがあって、それも痛ましかった。
そういう点に目をつぶれば、東映ヤクザ映画が好きな人にはかなりお薦めできる作品。



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タグ:小林旭
posted by 信州読書会 宮澤 at 14:09| Comment(0) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

それでもはボクはやってない 


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痴漢冤罪の審理の過程を描いた映画。
被害者の証言と、状況証拠だけで裁かれる
痴漢裁判の不当性を訴えた作品である。



★感想(以下ネタバレ)
「主人公がドアに挟まっていた上着を取ろうとしていた」ことを
駅員室に伝えにきた女性が、目撃者を捜すビラ配りのおかげで名乗り出る。



ここで、万事解決かなと思いながら見ていたが、
彼女が、主人公の無罪を立証するまで至らなかった。おいおい。


結果、映画の結末が『それでもボクはやってない』という
題名どおりのものになってしまった。


普通なら、目撃者が見つかったことで、主人公が
無罪を勝ちとってめでたしめでたしになるのだが、
そうはならず、一審有罪確定で終わる。
痴漢冤罪のフレームアップが主題なのでこういう結末になったようだ。
二審まで描いた、続編が製作される感じもないので、
え〜〜〜!! という結末であった。


現行の司法制度や捜査方法に対する批判的な意義のある映画だとは思う。
司法関係者や警察官、駅員は観るべき映画だと思うが、
一般の観客にとっては、劇的なカタルシスを欠いている。


主人公がどんな人間で、どんな生活をしていて、
有罪になった後どういう人間になったかまで描かないと、
観客としては、なんだか納得いかない気がする。
要するに、法廷劇のみで、背景となる人間ドラマに乏しい。
20人ぐらい客がいたが、2人ぐらい途中で席を立っていった。


なんで元彼女の鈴木蘭々が協力したのかとか、
どうして、主人公は就職しようとしたのかとか
被害者の女子中学生のこととか、もう少し描いてほしかった気がする。
拘置所のおかまと、性犯罪裁判傍聴オタクの存在は面白かったけど。


悲劇的でも喜劇的でもなく、ただ、勉強になりましたという感想。
脚本も良くて、全く飽きなかった。が、観終わったらかなり疲れた。


昔、学校で見させられたいじめや差別撲滅の啓蒙映画などと
一緒に上映するべき啓蒙映画のような気がする。
満員電車に乗るべきではないことがわかった。

あと、駅員室に行ったら終わりです。

追記

政治的な謀略に痴漢冤罪が使われています。怖いですね。



それでもボクはやってない スタンダード・エディション [DVD]


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2013年06月10日

ユリイカ

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期待していなかったので長いこと観なかったが、
観てみるとすべてが“さりげなくて”よかった。
映画で“さりげなさ”に徹するのは勇気がいると思う。
映画館で観ればよかったと後悔した。


217分という異様な長さが贅沢な映画だと思う。


これが130分ぐらいだったら、
中上健次の諸作品やテオ・アンゲロプロスの『霧の中の風景』の影響ばかりが
目に付いて『Helpless 』くらいやりきれなくなるところだが、


限りなく映画を間延びさせてストーリーを膨張させ
さりげなさを引き立たせたおかげで、
青山真治監督はオリジナルな境地を開拓していると思う。
ジム・オルークの『ユリイカ 』がラジカセから流れるシーンも
それを聴く役所広司とまったくのミスマッチで新鮮だった。


バスジャック犯人役の利重剛には説得力はなかったが、
役所広司が斉藤陽一郎殴るシーンは非常に説得力があった。


あらすじは、バスジャックにあったバス運転手と兄妹が
事件後、社会生活を営めなくなって共同生活をはじめ


やがて、おんぼろバスで旅に出るというロードムービーなのだが、
この旅自体に何の目的もない。


宮崎あおいが海に浸かるシーンは、
『渚のシンドバッド 』のラストシーンを思い出させた。


ラストシーンで宮崎あおいが崖から飛び降りるかと思いきや
戻ってくるのをヘリコプターで撮影シーンしたのは贅沢。
宮崎あおいが役所広司のもとへ戻ってきたところで映像がカラーになる


ささやかな「救い」を、ものがなしいカラー映像の中に定着させた映画。お薦め。




ユリイカ(EUREKA) [DVD]


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