信州読書会 書評と備忘録

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2013年07月25日

無関心な人びと(全二冊) モラーヴィア作 河島英昭訳 岩波文庫

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モラーヴィアといえば、イタリアの三島由紀夫というイメージが私の中にある。
20歳で本書を処女作として上梓した早熟な才能であるという点と
現代文学において物語を書くことの
孤独と不毛を象徴している作家であるという点においてである。


主人公の青年ミケーレは没落寸前のブルジョワ。
家庭の崩壊を食い止めることもできず、
恋愛にも真剣になれず、情熱を傾ける対象を見失っている。



会話と心理描写は、ガラス工芸品のように繊細で
すべてセクシャルな欲望の陰影をまとう。
道徳的規範がもはや形骸化して、欲望に呑み込まれていく
世界の光景が描かれている。
ただただ、崩壊の前に立ち尽くすミケーレは
今現在の日本の状況に出て来ても違和感のない主人公だ。


ブルジョワの頽廃を描いたかどで本書は
当時のファッショ政権から発禁処分を受けた。



古典的な心理小説の方法を採用しているので読みやすく、
破綻のない構成なので安心して読める。(三島の小説と同じように)
ハイティーンの学生が喜んで読んだと吹聴したくなる作品。
読書遍歴を重ねると読み返すのが苦痛になる作品でもある。



モラーヴィアの作品はかっちり作られていて
映画化の際に自由に脚色できるので重宝がられ
ベルトルッチの「暗殺の森」ゴダールの「軽蔑」などの
原作として、今なおファッションアイテムのように
二次的に消費されている。


モラーヴィアが好きな人にはパヴェーゼもお薦め。


無関心な人びと〈上〉 (岩波文庫)

無関心な人びと〈下〉 (岩波文庫)


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posted by 信州読書会 宮澤 at 10:29| Comment(0) | TrackBack(0) | イタリア文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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