ノーベル賞作家あるカミュの作品。
ペストが流行し隔離された街で、医師リウーがペストに挑む作品。
いつおさまるかわからないペストと闘うリウーの勇気に共鳴してゆく仲間たち。
人びとの連帯が力強く描かれている
のだけれども。
人びとの連帯という意味では
スペインの人民戦線を描いた
マルローの「希望」(新潮世界文学 45 マルロー (45) 所収)
のほうが私には感動的だった。
ペストが意味しているものが、
不条理な暴力なのか、ドイツの占領なのか
人々の心理的不安ななのか
最後まで読んでわからず。
ただひとつ、キリスト教の代表としてあらわれた司祭パルヌーが
罪なき少年の死に立ち会って、自らの無力を認め、
「理解できないものを愛さなければならない」と思わずもらすとき、
決然として「そんあことはありません」と非難するリウーの姿は感動的だ。
宗教的確信なしに、――つまりは、人類の救済などという使命なしに
行動するリウーのような人間こそが、実存主義者だと、
カミュは「ペスト」の中で訴えたかったとみえる。
解説によると、カミュはこの作品を自身の作品の中で
最も反キリスト教的と称したそうだ。
「幸福な死 」「異邦人 」は
「自己への誠実」を実存主義に根本にすえていたが、
「ペスト」では、さらにそこへ正義への行動を通した
人びとの連帯が加えられている。
しかし、全体として散漫な印象を受ける作品だ。長い。長すぎる気がする。
戦後のフランスで熱狂的に迎えられた理由を
もはや知ることが出来ない気がする。
敢えて不遜な言い方をすれば、
時代とともに古びていく作品なのではないか。
東日本大震災の後に読むと、また違った感想がある。
日本において宗教が、人を救済しないとしたら
放射能汚染は我々にとって何を意味するのか、
『ペスト』を読みながら考えてみたい。
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