信州読書会 書評と備忘録

世界文学・純文学・ノンフィクションの書評と映画の感想です。長野市では毎週土曜日に読書会を行っています。 スカイプで読書会を行っています。詳しくはこちら → 『信州読書会』 
Facebookページ
『信州読書会』 
YouTubeチャンネル
YouTubeチャンネル「信州読書会」
*メールアドレス
名前

 

2013年07月25日

暗室 吉行淳之介 講談社文芸文庫

Sponsored link





吉行淳之介というのは短編小説やエッセイが主な作家で
私小説の枠組みを外すことがないので
長編小説は、短編の連作のようなものが多い。
作品群も人間関係の機微に関する達人いう趣があって、
エッセイに延長のみたいで
その点で、作品評価を貶める結果になっているのは残念だ。


感覚に根ざした自己規範が強い作家なので、
作品の深化があっても、転換がなかったのは確かだろう。
高度経済成長の中で文学も政治も制度化していく中で
個人の感覚を楯に、果てしない撤退作戦をしていた感じがする。



私は現在28歳なのだが、改めて「暗室」を読み返して
こういう一節に目がとまる


『たとえば、十五年前私は二十八歳で、自分がすっかり年寄りになったと感じていた。二十二歳の娘とは、不釣合いで交際する資格がないという気持ちだった』

なるほど。と思う。
身につまされる気もするが、こういう言葉に反応する姿を、人に知られたくない。
作者と心の恥部を共有しているような錯覚をおこさせる。
なので、吉行ファンが近くにいると鬱陶しいだろうなと思う。


吉行の作品を最初に読んだのは20歳くらいのときで「砂の上の植物群」だった。
文章もぎこちないし、展開もないし、低レベル作家だなというのが印象だった。
25歳くらいになってエッセイや、対談に触れる機会があり、端的にいってハマッた。
こつこつ文庫を蒐集して40冊くらい持っている。
最近は、たまにエッセイを読むくらいだ。一度読んだものでも楽しめる。



さて、話を戻して「暗室」だが、別に暗室の中の女がどうだという話ではなく、
不可解な女に惹き付けられる主人公の心の揺れがこまかく描写され、
たまに詩情のある挿話が挟まれるだけ作品だ。



「暗室」モデルの女性の暴露本が出たが、その中の吉行はグロテスクで読後感が悪い。
私は未だに気づかないが、いつか、吉行作品のいびつさを感じとれるようになりたい。

暗室 (講談社文芸文庫)



追記

35歳になってこの自分の感想文を読んでみて
恥ずかしいなあというおもいでいっぱいです。


人生というのは自分で納得できるほど単純ではないなあと
30半ばになってわかり、謙虚になりました。




Sponsored link


posted by 信州読書会 宮澤 at 10:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/370201300
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。