信州読書会 書評と備忘録

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2013年07月25日

珍品堂主人 井伏鱒二 中公文庫

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学校の先生崩れの骨董愛好家、珍品堂(57歳)の
骨董をめぐる悲喜こもごもの人間模様を描いた傑作。


骨董愛好家達のめんどうなやりとりだけの話だったらつまらない。
実際、そんなチマチマした好事家のための小説ではない。


白眉は珍品堂が、金主を見つけて「途上園」という
会員制高級料亭を経営する顛末で、そこがめっぽう面白い。


九谷という金主を掴まえた珍品堂は
蘭々女という審美眼から性癖にいたるまで一筋縄で行かない
茶の湯のお師匠さんをコンサルに迎え、開業準備する。
女中教育を按配するくだりなどは
料亭経営のいろはを指南してくれて興味深い。



蘭々女の経営指南はこんな感じ。

『…総じてお客というものは、割合に女中の後姿に風情を感じるものである。ことに、旧式の大宴会の場合にはそうである。その風情を身につけさすには彼女たちを合宿させるのに限るのだ。女ばかりが一つ屋根の下で寝起きしていると、お客のいやらしさも、むさくるしさも、つい懐かしくなって夕方が来るのを待ちかねるようになる』


とにかく、水商売の肝要を委細尽くした女史なのだ。
彼女のおかげと珍品堂の美食センスで店は大繁盛。
だが、珍品堂と蘭々女の間に確執が走り、珍品堂は「途上園」を追っ払われる。



作中、小林秀雄をモデルとした来宮という大学の先生が出てくる。
彼が、ラストで珍品堂の窮地を救い、話は終わるのだが、
珍品堂の逆上を、「鮎の友釣」の話で治めるくだりも気が利いている。


井伏はやっぱり手練だな、と私を嘆息せしめた作品。
骨董文学としても読めるが、それより料亭文学としてお薦め。


登場人物のモデルが知りたい。


珍品堂主人 (中公文庫)


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ラベル:井伏鱒二
posted by 信州読書会 宮澤 at 09:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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