信州読書会 書評と備忘録

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2013年07月25日

富士 武田泰淳 中公文庫

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富士山麓の精神病院を舞台とした小説。
設定はサナトリウムを舞台としたトーマスマンの魔の山に近い。


精神科医の実習生の大島、院長の甘野、黙狂少年岡村、
自らを「宮様」と称する一条青年など、いろいろの人物が出てくるが、
物語を牽引するような魅力的な人物は一人も出てこないので、平板な長編小説だ。


読みやすいが、止め処もなく長い。



富士山がいつ爆発するのか楽しみにして読んだが、
残念ながら最後まで爆発しなかった




唯一の山場は、一条青年が警官に変装して天皇に精神病院の惨状を直訴し
憲兵に拷問されて死ぬという事件が起こり
天皇からの恩師品が精神病院に届く。
それを機に病院内でカーニバルが起こり、
甘野院長の自宅が放火されるという事態が勃発。


ドストエフスキーの小説にも通ずる典型的な物語のパターンを踏襲してみせた作品。
一条青年のモデルが秩父宮であるという説もあるが、それにしても、だからなんだという感じ。



このような19世紀的な長編小説を
敢えて書いた武田泰淳の試みを、賛嘆しないでもないが
読み終えた後の、深い徒労感は払拭しがたい。



晩年ビールを飲みながらでないと創作できなかったといわれる武田泰淳であるが、
そのような状況下、中途で投げ出すことなく、粘り強く書き継いだという意志を
少なからず感じることができた。



精神病がテーマになっているにもかかわらず、
フロイトの精神分析を一切無視して書き終えたことだけが、
小説家武田泰淳の面目躍如だと思う。そうではないだろうか?

富士 (中公文庫)

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posted by 信州読書会 宮澤 at 09:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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