信州読書会 書評と備忘録

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2013年07月25日

博士の愛した数式 小川洋子 新潮文庫


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★あらすじ
交通事故で80分しか記憶のもたない老数学者の「博士」の家に
家政婦として派遣された主人公たちの清らかな交流を描いた作品。
主人公は若くして離婚し、小学生の一人息子を育てていて、
博士はその子にルートというあだ名をつけてかわいがる。
博士とルートは同じ阪神ファン。


博士は、数字の持つ神秘によって2人を魅了し惹き付ける。
ルートは博士との交わりを通して成長する。
一種の擬似家族の関係はルートの誕生日会にクライマックスを迎える。
博士はやがて、80分の記憶さえも失い施設に入る。
ルートは中学校の数学教師の資格をとる。



ウェルメイドな作品。
数学と阪神をめぐる挿話はどれも魅力的で清潔。


博士は「実生活の役に立たないからこそ、数学の秩序は美しいのだ」と述べる。


数学の秩序のイノセントな美しさとは対照的に、人間の心理は混沌としており、
博士と複雑な関係にある義姉の存在はそれを象徴している。
ヒステリックな義姉は必要以上に干渉したとして主人公を家から追い出すが、
イノセントな感情で結びついた博士と少年の絆が、再び彼らを博士の元へ戻らせる。


博士と義姉の過去の恋愛関係が、少しだけ触れられているが、最後まで曖昧なまま終わる。
よって、結末のとってつけた感は否めない。
じゃあ、そこに踏み込むのがよかったのかといえば、そうでもない。
そうでもないか? 


同じく数学者を扱った「ビューティフルマインド」は、
大学時代からの親友さえも想像上の人物であったなど、
天才数学者の住む世界がすべて妄想だったという悲惨が描かれていた。


ただ、この作品はすでに時間の停止した世界に住む博士が
主人公なので、最初からそこまで踏み込まない作品になっている。


過去に傷を負った人々が、今目の前にある日常生活のきらめきを見つめて
生きてゆこうとする勇気を顕彰した作品としては出色、だと思う。




博士の愛した数式 (新潮文庫)



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posted by 信州読書会 宮澤 at 09:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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