信州読書会 書評と備忘録

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2013年07月25日

ピンフォールドの試練 イヴリン・ウォー 集英社版 世界の文学15


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★あらすじ
名高い小説家のピンフォールドは、
睡眠薬の副作用で気が重くなり、転地療養しようと
船でインドへ出かける。


船に乗り、睡眠薬を減らすと、
船室でピンフォールドは様々な幻聴に悩まされる。
途中で船をおりて飛行機に乗り換え、
妻の迎えに従って帰国すると症状は消える。


ピンフォールドの船室にいろいろな人々の声が聴こえて、
最初はピンフォールドの噂話だったのが、


やがてエンジェルという架空の家族の人々による彼への罵倒になる。
彼をアル中だ、ファシストだ、ユダヤ人だ、同性愛者だと
かなりえげつないが、気の利いた言い回しで中傷してくる。
堪忍袋の緒が切れて、彼も応酬して罵るという荒廃した内容なのだが、
ピンフォールド自身が誇り高く、頑迷で、気難しくて、怒りっぽいので、
やりとりにおもわずふきだて笑うところがいくつもあった。



ピンフォールド自身は、イギリスの余裕派みたいな小説家で
ピカソや、日光浴や、ジャズが大嫌いで、
宗教心から受けたささやかな慈愛によってそれらへの嫌悪を退屈にかえたという
鼻持ちならない男で、文学に関する考えも年季の入ったスレ方をしている


たいがいの小説家は一つか二つの本の材料を持って生まれてくるだけで、後はすべて手品を使っているに過ぎないのであり、それがディゲンズやバルザックでも、明らかにそうして手品を使って読者を瞞しているのだった。



こういう考えで、数々の作品を生み出し令名をはせている。


船長には従わなければならないと思ったり、
幻聴に出てくる陸軍少将に勝手に敬意を払ったりと、
軍隊の秩序への郷愁を、無意識に表す場面もあるので
幻聴の原因は直接には触れられていないが、
私の見解としてはしては、人付き合いが苦手なピンフォールドの
第一次世界大戦での適応しがたかった従軍体験へのストレスが
(輸送船で勤務していた経験があり、パラシュート降下では足を骨折した。)
狭い船室と、睡眠薬の中止によってPTSDとして発症したとみている。


(最近、どうも私は小説に戦争の影響を見つけ出す読み方になっているが・・・)


語り口が饒舌で精神疾患を扱ったわりには
ウィットにあふれた作品であり
訳者の吉田健一によるとウォーは文章家なので(まあ、手練という意味か)
気軽に楽しめる作品としてお薦めだ。



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posted by 信州読書会 宮澤 at 09:14| Comment(0) | TrackBack(0) | イーヴリン・ウォー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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