信州読書会 書評と備忘録

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2013年07月25日

プロレス少女伝説 井田真木子 文春文庫


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男子プロレスの歴史は、わかりやすい。
外人レスラーにカラテチョップをくらわせる力道山のイメージで
基本的には、アメリカを倒すという物語によって、支えられている。


全盛期の新日本プロレスのIWGP構想も、リングスも、プライドも
外国人を日本人が倒すという物語が成立することで、幅広い支持を受けている。


誰が一番強いかというよりも、強い日本人の活躍が観たいという
ナショナリスティックな欲望に支えられないと、観客を集められない。
メインイベントが外国人同士の試合などは、コアなファンしか見ないものだ。



アメリカにおいて男子プロレスの傍系として、生まれた女子プロレスは、
日本に相撲に対する、女相撲の発生にルーツを持つと筆者は主張する。
その点で、スポーツ性よりも演劇性にバイアスがかかる。
女子レスラーに熱狂的に陶酔する少女ファンと、格闘技として観戦する男性ファン
そういった支持層の不明確さが常に付きまとっている。



本書は予めそうしたナショナリズムが機能しにくい不安定な基盤にある
女子プロレス興隆期のレスラーの軌跡を扱ったノンフィクションである。


クラッシュギャルズとして女子プロレスブームを牽引した長与千種、
柔道からプロレスラーに転身した神取しのぶ、
日本人と中国人のハーフであり12歳で日本に帰化した天田麗文、


インディアン系の白人レスラーであるメデューサ・ミシェリーの半生が語られている。
それぞれにとって、女子プロレスの意味合いは違うが、かなりの熱意で
プロレスという極めて演劇性の強いスポーツに惹き付けられていたのがわかる。


しかし、女子プロレスの興行的な不安定さと、その存立基盤の脆弱さによって
彼女達を決して自己実現させてくれないという矛盾を鋭く描き出している。



女子プロレスは現在、女子柔道、アマチュア女子レスリングの
台頭とは反対に、その中へ発展解消されたかのように、ビジネスではなくなった。
全女は2005年4月17日の後楽園ホール大会 を最後に解散。


女子格闘技は、オリンピック競技という世界に吸い込まれてしまった。
天田は1986年の第一回アマチュアレスリング世界大会に日本代表として
出場し同じ階級の対戦選手がいなかったため優勝してしまうという挿話が興味深い。
女子アマレスの歴史の急激な発展が逆説的に描かれていている。


長与千種は「私が、女子プロレスにふりがなを振った」と自負しているが、
現在プロレス自体に、観客を惹きつけるようなふりがながふれなくなっている。
それどころか、あらゆるジャンルにふりがながふれないという事態が蔓延している。


女子プロレスの革新期の記録だが、
一般にポストモダンよばれる混沌時代幕開けの症例報告としても読めるので、お薦め。



プロレス少女伝説 (文春文庫)


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posted by 信州読書会 宮澤 at 09:12| Comment(0) | TrackBack(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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