信州読書会 書評と備忘録

世界文学・純文学・ノンフィクションの書評と映画の感想です。長野市では毎週土曜日に読書会を行っています。 スカイプで読書会を行っています。詳しくはこちら → 『信州読書会』 
Facebookページ
『信州読書会』 
YouTubeチャンネル
YouTubeチャンネル「信州読書会」
*メールアドレス
名前

 

2013年07月25日

情人 北原武夫 講談社文芸文庫


sponsored link







還暦前の小説家である主人公と、水商売上がりの女との不倫小説。
女は、建築家で妻子ある男と二股関係にあり、
主人公は女の情人であることに徹する覚悟はありながらも、
ひどく自尊心を傷つけられると、その状況に堪えられなくなる。


しかし、手に余る女を簡単に捨てはられない。
かといって、女に狂うほどの未練もない。


一刻ごとに真実と裏切りに入れ替わる感情。
男女の恋愛の優位が激しく逆転しつづける様が
これ以上ないというきめ細やかさで描かれている。


あらゆる恋愛状況を知悉している
恋愛のマイスターたる老年の主人公が、
どんなきつい修羅場を迎えようが、
感情に流されずに、心を落ち着かせようとする苦心は、
老練であり、卑怯なのだが、
その手管に簡単に絡めとられない
女の言動も凄まじく、かつ魅惑的だ。


女の嘘、仕草、官能に至るまで怜悧に分析し尽くそうとするのだが、
分析が時間に追いつかず、結局は女に翻弄されてゆく主人公。
恋愛は虚しいとつくづくわかっていても本能に抗えない
人間の弱さが、晩節を迎えた男の低温の中で語られる。


卑怯な男と女の目くるめく闘争。


だが、舞台は息苦しくなるほどに狭い。


読めば、女性不信にも男性不信にもなること請け合い。


戦争、貧困、社会と全く無縁の文学。
ただただ情人となることの困難を描いた心理小説。



情人 (講談社文芸文庫)


sponsored link



ラベル:北原武夫
posted by 信州読書会 宮澤 at 09:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。