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1945:もうひとつのフランス 3 七彩
七彩 ロベール・ブラジヤック 池部雅英訳 1945もうひとつのフランス 国書刊行会
★あらすじ
学生時代にパリで出逢い、恋人同士だったパトリスとカトリーヌ。
カトリーヌは、ファシズムに惹かれ安定した生活力のないパトリスに
危険を感じて別れ、仕事の同僚フランソワと結婚する。
パトリスは失恋の傷みから、外人部隊に入隊し10年過ごす。
1937年のニュルンベルクでのナチス党大会を観て
パトリスは完全なファシストになる。
10年ぶりにパトリスはパリに戻り、カトリーヌに再会する。
カトリーヌは、パトリスへの恋情に火がつき苦しむ。
フランソワは今なおパトリスを愛している妻に絶望し
パトリスと同様に外人部隊に入隊し、スペイン戦争のフランコ側に参加し負傷する。
★感想
対独協力作家で戦後銃殺されたブラジヤックの七章からなる作品。
反ユダヤ人のパンフレットを多数制作したことでも断罪され悪名高い。
物語→手紙→日記→省察→対話(戯曲)→資料→独白と
すべての章の形式を変えて描くという手の込んだ構成になっている。
(手は込んでいるが、個人的には無意味な気がした。)
「省察」の部は『30歳論』というべき格言に満ちていて興味深い。一例を引くと
青春の陶酔、歓喜、苦悩の追求がドラマとなる最初の時が30歳だ
30では幸いにして、金は追い返すことのできる一介の仲間にすぎない
スペイン戦争をフランコ側にたって記述している点で
国際義勇軍側に立ったアンドレ・マルローの『希望』と対照をなす作品。
ブラジヤックはファシスト作家であるが、
決してファシズムに希望を持っていたわけではないことがわかる叙述もある。
もっぱら、ファシズムの雰囲気のなかでのみ生活した人間がいったいどうなるのかが判明するのはこれらゲルマンのナチ少年団員やイタリアのファシスト少年団員が成人になったときだろう。たぶん結果はあまり芳しくないだろう
愛した男が二人ともファシストになったカトリーヌの独白も哀しい。
いまの世の男たちは悲劇作品の王様たちよりももっと自分のものにするのが難しい
祖国に尽くすことがファシストになることだった作家の悲劇的な作品。
もっとも小説自体はそんなに悲劇的ではないが…。
個人的には、女性にもてないジルが主人公の作品という気がした。
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ラベル:ブラジヤック