信州読書会 書評と備忘録

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2013年07月25日

ポロポロ 田中小実昌 河出文庫

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★あらすじ
北九州の港町の教会堂で牧師をしている主人公の父は、
かつて、廃娼運動をして右翼にステッキで目を突かれたり、
震災後、リンチされる朝鮮人を庇ったりして、殺されそうになったことがある
過激なプロテスタントである。


昭和十六年、真珠湾攻撃のはじまった冬もなお、家族と一人の信徒は
憲兵隊や特高に圧迫されながら、小さな祈祷会を行っている。


そこでは信徒が「ポロポロ」という奇妙な祈りをひたすら捧げるだけである。
主人公の私は、父方の祖父の命日に、家に誰かがきたのを感じる。
しかし誰だかわからないままである。
それが祖父ではなかったかと、主人公とその父は話し合うが、
それもポロポロという言葉の前に崩れ去ってゆく。



★感想
迫害された信仰が無力感までぶち当たった時に、
唱えられる祈りを主題として、独自の宗教観を提示した短編。


父や、信徒の一木さんが唱える「ポロポロ」という言葉は、
「信仰をもちえないと(悟るのではなく)ドカーンとぶちくだかれたとき
ポロポロがはじまるのではないか」と主人公は考える。


さらに「クリスチャンと日本武士は同居しない」と、
明治以降のキリスト教のあり方を批判している。





過酷な現実を前に、祈りの言葉を失った父が
ただただ「ポロポロ」と唱える姿に
はからずも、戦時中の無気味な雰囲気が浮かび上がる。


ポロポロ (河出文庫)


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posted by 信州読書会 宮澤 at 08:44| Comment(0) | TrackBack(0) | キリスト教文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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