信州読書会 書評と備忘録

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2013年07月25日

妊娠カレンダー 小川洋子 文春文庫

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★あらすじ
妊娠した姉が子供を産むまでの過程を大学生の妹の日記を通して描いた芥川賞受賞作品。
妹は、防腐剤のたくさんついたグレープフルーツでジャムを作り、姉に喰わせる。


★感想
姉妹の両親はすでに病死している。虫のすぎる設定。
家族関係を予めカッコで括る操作を施すことが、
短絡的なプロットの進行に、多いに役立っている。



姉は精神科に通っていてやや情緒不安定。虫のよい設定。


妊娠が進むに連れて、姉は、自分の感覚に立てこもり、わがままになる。


妹の悪意が姉に投げかけられるたびに
姉のわがままの輪郭が鮮明になる。


そして、義兄にも悪意をなげかけることで
今度は、妹の悪意の輪郭が鮮明になる。


こういう仕掛けになっていることで、姉妹のバランスはよくなり、


作品としての安定感が確実なものになる。鉄壁のパターンである・


それなりに小川洋子の作品に興味を持って読み出した。


『博士の愛した数式』『冷めない紅茶』と読んできて、
とても安定感のある作品を書く作家だと感心した。


同時に、作品設定のカッコの括り方がずいぶん大胆だなとも思う。
彼女の創作しているのは、悪意が満ちていても、意外と居心地のよい密室である。



カッコに括って割を食う登場人物がワンパターンである。
『博士の〜』の別れたダンナ。『冷めない〜』のサトル
そして『妊娠カレンダー』の義兄。社会的な人物が作品内で最も排除されている。


この端役の人形みたいな男たちの『プロジェクトX』はいつはじまるのだろう。


いつ、物語は三人称にたどり着き、作品世界に社会性が生まれるのだろう。


いつ、小川洋子の作品の主人公たちは逃れられない宿命に泣き叫ぶのだろう。疑問だ。

妊娠カレンダー (文春文庫)




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タグ:小川洋子
posted by 信州読書会 宮澤 at 08:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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