信州読書会 書評と備忘録

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2013年07月25日

プロジェクトX 挑戦者たち あさま山荘 ― 衝撃の鉄球作戦

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プロジェクトX 挑戦者たち 第4期 Vol.9 特集 あさま山荘 ― 衝撃の鉄球作戦(第1部&第2部収録)


好奇心で借りてしまった・・・。
NHKのドキュメンタリーなのでさしたる期待はしていなかったのだが、
意外な面白さに満ちていた。この回は番組至上最高の視聴率をとったらしい。


あさま山荘事件でモンケーンという鉄球をクレーンで操作した
地元のクレーン職人さんの兄弟が出ていた。鉄球兄弟と呼ばれているらしい。



その方たちは義兄弟のお二人で、お兄さんが県警から
クレーン車を一台出してくれと電話で要請を受け
突入日に、防弾処置を施したクレーン車を使って
あさま山荘の三階部分を破壊したのである。


この鉄球兄弟のお兄さんは当時24歳のクレーン職人で、
立てこもった連合赤軍のメンバーとほぼ同じ年である。
この時点ですでに連合赤軍が労働者の代表でもなんでもない構図が鮮明になっている。




しかしながら、この人の現在の風貌に、かなり痺れた。
当時の写真にも痺れたが。工員帽子を斜にかぶってキマっている。
なんせ、小田実にそっくりで、(毒蝮三太夫も少し入っている)
連合赤軍メンバー以上に革命家の雰囲気漂う風貌なのである。


あまり口数も多くなく、赤軍派に対して
人に迷惑かけてふざけたやつらだと思っていました、と訥々と語るのだが、
その風貌も語り口もおよそNHKの番組にそぐわない過剰さを発散していた。



ご本人は、たぶん「ギターを持った渡り鳥」ならぬ、
「クレーンを操る渡り鳥」といったお気持ちなのだろう。
小林旭みたいな人なのである。弟さんを宍戸錠に見立てたのだろうか。
その風貌、自意識ともに、まったくNHK的でなく、
観ているこっちがハラハラするのである。NHKの間尺に合わないのである。


事件が終わって、家に帰ると奥さんに「腹が減った、メシにしてくれ」と
まるで事件なんか起こらなかったようにさらりといってしまう方なのである。
翌日も普通に仕事に出たそうだ。前日は狙撃されて目の前の防護ガラスにひびが入ったのに。


彼のヒロイックな自意識に違和感がないのは、この方がまさに小林旭を演じているからだ。


日活無国籍アクションの世界を生きている方なのである。役者である。
ご兄弟で再現シーンを演じる姿に、マイトガイを感じたのは私だけではあるまい。
その方が、最後のほうで、人質の方の手紙を読んで、
目に涙を浮かべているのを観て、ジーンときてしまった。
その意外とつぶらな眼は、小林旭の眼にそっくりであった。



クレーン車というのは、「機械仕掛けの神」である。
ギリシア悲劇の「機械仕掛けの神」もクレーンでできていた。



大江健三郎も『「浅間山荘」のトリックスター』なんて短編を書かずに
『「浅間山荘」のデウス・エクス・マキーナ』を書けばいいのに。マジで思う。


いずれにしても、大江健三郎の想像力からは絶対に出てこない、
すごいクレーン職人さんだった。まあ、お兄さんはクレーンを運転しただけだが。
たぶん、小林旭に憧れるクレーン職人が、赤軍派を撃破したのだと思う。
マルクス・レーニン主義がマイトガイのヒロイズムの前に解体したのである。ちがうか?





「大江健三郎は偉大の一歩手前なんですよ、その一歩が果てしなく遠い」
という意味のことを福田和也氏がしゃべっていた気がするが、
実際その通りだと『プロジェクトX』をみながら考え込んでしまった。


一応、あさま山荘事件の銃撃戦だけを扱った大江健三郎の
『洪水はわが魂に及び』の最終章を確認のため読んでみたが、
『同時代ゲーム』や『懐かしい年への手紙』の「黒い水が出た!」みたいに
「機械仕掛けの神」がでてきましたよ!』とかって、
大江特有の太字ゴチックが現われるかと思ったが、
そういう記述は、やっぱりなかった。


この回の『プロジェクトX』のエンディングは小林旭の『熱き心に』で〆てほしかった。
プロジェクトX 挑戦者たち 第4期 Vol.9 特集 あさま山荘 ― 衝撃の鉄球作戦(第1部&第2部収録) [DVD]



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posted by 信州読書会 宮澤 at 08:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 連合赤軍関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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