信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月15日

蜘蛛の糸 芥川龍之介



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★あらすじ
地獄に落ちた強盗のカンダタは
生前、小さな蜘蛛の命を助けたことがあった。

極楽の御釈迦様は、その善行をひとつのチャンスに替えて、
蓮池から、地獄に一本の蜘蛛の糸をたらさせる。
犍陀多を助けようするが、彼が同じく蜘蛛の糸にすがって
あとから登ってくる地獄の亡者どもを罵ったため、
望みの蜘蛛の糸は切れ、犍陀多は地獄に、くるくると落っこちてゆく。

★感想
教科書に載っている小説。話の筋くらいは誰でも知っているだろう。

犍陀多の了見をためすような御釈迦様の行為は、なんか嫌なものである。
汚い地獄の亡者が蓮池からぞろぞろ上がってきて、酒盛りでもするのを、
御釈迦様が、喜ぶわけないと思うと、気まぐれな暇つぶしとしか思えない。


★原話
岩波文庫の『エスピノーザ スペイン民話集』に『蜘蛛の糸』の原話となった
『聖女カタリーナ』という作品があり、たまたま読んだ。





聖女カタリーナが、逆縁で口の悪い母親より早死にする。

カタリーナは天国へゆくが、罪深い母親はやがて死んで地獄に堕ちる。
カタリーナは聖母マリアに、母親を天国に上げてくれと頼む。

しかし、主イエスに相談するように言われ、
イエスに相談すると、聖母マリアの判断に任せると言われ、
カタリーナがまた、マリアに相談すると、「一緒に地獄に堕ちるか、ここに残るか」
と二者択一を迫られたので、カタリーナは「マリア様にお任せします」と答える。

マリアは、地獄に天使たちを遣わせ、カタリーナの母親の魂を
引き出すが、地獄のすべての亡者の魂もそこにくっついてくる。


カナリーナの母親が、くっついてきた亡者の魂たちに
「天国へ行きたかったら、私のような娘を持つことだ」
と悪態をついたのでに、天使たちはあきれて、母親の魂を地獄に放す。
結局、聖女カタリーナは、母親と一緒になるために、自らの意志で地獄に堕ちる。


★所見
原話のほうが聖女カタリーナの異常なまでの孝行心が垣間見えて面白い。
それに比べると芥川の翻案は、教訓臭さが強くて、なんだか冴えないのである。
母と娘のキリスト教的親子愛というのに、芥川は興味惹かれなかったのだろうか?

キリスト教徒の愛と仏教の慈悲の違いといわれればそうなのかもしれないが、
それでも『蜘蛛の糸』には仏教説話の影響というよりも
芥川独特の審美的ニヒリズムが、濃く漂っており、鼻につく。
「極楽はもう午近くになったのでございましょう。」と白々しく終わるよりは
カタリーナの、あえて地獄に下る、というファナティックな結末で終わるほうが、
説話としての読後感というのは、爽快であると思うのだが……。


芥川龍之介
ラベル:芥川龍之介
posted by 信州読書会 宮澤 at 14:34| Comment(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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