信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月15日

アヴァンギャルド芸術 花田清輝 講談社文芸文庫


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★花田清輝の評論について
ほとんどがペダントリーで成り立っている。
虚空から鳩をとりだすマジシャンのように、
花田が、軽快な手つきで持ち出してくる古典作品に
少なからず通暁していないと、狐につままれたような気分になる。

★写真について
昔読んだ、花田清輝全集の扉に、晩年の花田の写真があり、
若かりしころの美貌が消えうせ、顔面崩壊といった感じでむくみきって
まるで別人といった印象あった。あの写真が本人なのか未だに謎。


★ 『ドン・ファン論』
モリエールの『ドン・ファン』をけなしているのだが、冴えない。

★ 『芸術家の制服』
岡本太郎論。岡本太郎をエドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』
探偵デュパンと並べて論じている。力作。



『デュパンが昼の中に朦朧とした夜を持ち込まずにいられ』ず、
『極度に理知的だが、絶えず朦朧とした本能の影につきまとわれている』のに対し、


しかるに、たとえば岡本の『夜』という作品は、夜とはいいながら、
なんとすべてのイメージが、正確で、鮮明に浮かび上がってみえることだろう。


それはまぎれもない本能の世界のなまなましい表現だが――しかし、そこには、
曖昧なものは何ひとつなく、するどい理知の光によって、隅々まで浸透されているかのようだ。
岡本は、夜を描くばあい、どうしても夜のなかに、昼をつつみこまずに入られないのだ。



以上のように述べている。


★ 岡本太郎による花田清輝への弔辞。
開高健が編集した『神とともに行け 弔辞大全?』という本が新潮文庫にあり、
そのなかに、岡本太郎が花田清輝との出会いを回想した弔辞『「夜の会」前後』が所収されている。
この文庫の中では、最も感動的だったので、引用したい。(どうせ品切れだし、改行は適当)


清輝との出会いは、実に偶然なきっかけからだった。
終戦直後、私は周囲を見回して、文化・芸術の状況すべてに絶望した。
だからこそ強烈に、あらゆるものに挑まなければならない。
それは同時に言いようのない孤独感である。単に一人ぼっちということではない。
まるで断頭台にあがっているような、逼迫した思い。どうにもならない。どうしようもない。


あるとき名古屋に行った。ふと友達の本棚に『錯乱の論理』という本があるのを見た。
その題名が私を惹きつけた。パラパラッとめくって、面白そうなので
「これ、借りてくよ」といって持って出た。汽車の中で読みはじめた。

オヤッと思った。当時私はほとんど誰にも理解されず、異質な人間として扱われ、
あらゆる機会にそれを思い知らされたし、また逆にこちらの心にこたえてくれるものは
何ひとつなかったのに。

しかし清輝の一頁一頁を繰りながら、私の心は熱い共感をおぼえた。
ああここに、俺にこたえてくれる人間がいた。

(中略)

その数日後、突然、予告もなく清輝が一人で、上野毛のわが家にあらわれた。
私は窓際にいたが、何かの気配を感じ、ふと外を眺めた。
すると、黒々とした長髪をなびかせて、鋭い眼ざし、緊張した面持ちの彼が、
玄関に向って一直線につき進んでくる。とたんに
「あ、清輝だ」
と思った。まったく顔を知らなかったのに。

(中略)

私が、「二等兵物語」という軍隊時代の体験を書いたことがある。
理由もなく順番に殴られるのだが、そのとき四番目あたりが一番激烈にやられるのだ。
私はいつも、四番目に名乗り出た。
何の意味も、得もない時点で、ただマイナスの運命に挑むためだけに。

清輝はそれを読んだ、と言って、
「やっぱり太郎はインテリだよ。ああいう極限の場で、思想が行動となって出る人間は少ないんだ」
いかにも嬉しそうに笑った。読みものとして、さまざまな反響はあったが、
こんな読み方をしてくれたのは清輝だけ、やっぱり精神の友だった。


花田との邂逅シーンはまるでニーチェの『ツァラトゥストラ』の
第一部のなかの『山上の木』のお話みたいである。そんなことを思った。

アヴァンギャルド芸術 (講談社文芸文庫)



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ラベル: 花田清輝
posted by 信州読書会 宮澤 at 14:26| Comment(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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