信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月15日

夫婦善哉

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織田作之助の『夫婦善哉』の映画化。監督、豊田四郎。1955年公開。

★あらすじ

船場の問屋の放蕩息子、柳吉は、芸者の蝶子を囲った為、


父からを勘当される。病床にあった柳吉の妻は、
一人娘のミツコを残して死去。
柳吉の父は、婿養子をとって家を継がせ死去。


居酒屋やカフェを経営するも、心労から柳吉は腎臓を患い
献身的に看護する蝶子は、自分を捨てて去っていきそうな
柳吉の裏腹な態度に傷き、とうとう自殺未遂する。
あともどりできなくなった柳吉が、実家への未練を断ち切り
腹を固め、蝶子と手をつなぎ、小雪ちらつく往来を歩いて終り。


★感想
原作は昔読んだが、さっぱり忘れた。本棚を捜したが見つからない。
確か数年前に『夫婦善哉』の続編の遺稿が発見されたとかで
話題になっていた気がする。  



陰惨な話であるが、関西弁のセリフの語尾で
すべてが笑いとばされていて、人情喜劇になっている。


森繁久彌の代表作であるそうだが、
森繁演じる柳吉の存在自体がミステリアスである。
実際、何を考えているかよくわからない。


言動はいい加減で、およそだらしなく、変な色気はあるが色男でもない。
ただ単に、あまったれたわがままなボンボンの役柄なのだが、
それだけだったら、林家いっ平でもリメイクできるだろう。
なのに、森繁の演じる柳吉の演技のいい加減さに、まったくスキがないため、
かえって、えたいのしれない凄みを、錯覚させる。


要するに、森繁の存在が、一見平凡なわりに、ミステリアスである為、
対照的に、淡島千景が、非常に健気でいじましい片恋の女に見えようになっている。
よって、一種の探偵小説的な結構をもっている。
主人公であるはずの森繁には、探偵の遊戯性があり、(ことに美食家というところなど)
事件に関して終始、傍観的である。ドラマを生きていない。


逆に主体的に、女の幸せめがけて、事件のさ中を生きているのは蝶子役の淡島千景である。
彼女は終始ドラマチックで、柳吉が好きで好きでたまらず、ガス自殺を試みる。
彼女が、共感を集めるからくりはそんなところだ。
恋愛小説というのは、つきつめると探偵小説に似てくる。
織田作之助は『可能性の文学』という小論で、
志賀直哉を頂点とする日本の一人称心境小説を攻撃して
スタンダールのような三人称の活劇小説の復権をとなえていたが、
そういう意味で『夫婦善哉』はその実践という感じがする。


物語の展開が早いので映画化しやすい作品である。
実際、オールセットで撮影されており、非常に美しい。
そして、話の筋もなにもかもオールセットのつくりものめいた匂いがして
物足りなさを感じるのだが、同時に贅沢でもある。


私は、森繁のエッセイをことあるごとに収集していて、
4冊持っているのだが、すべて未読である。
この映画をきっかけに読んでみようと思った。

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posted by 信州読書会 宮澤 at 14:23| Comment(0) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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