信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月15日

けものたち・死者の時 ピエール・ガスカール 渡辺一夫・佐藤朔・二宮敬訳 岩波文庫


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Wikiによるとかつて、三島由紀夫は、大江健三郎のことを

「東北の山奥から出てきた小娘が上野駅で女衒にかどわかされて淫売屋に叩き売られるみたいに、
あいつは四国の山奥から出てきて、渡辺一夫という女衒にかどわかされて、
岩波楼っていう淫売屋に叩き売られたんだよ」

と揶揄したそうである



初期の大江が影響を受けたといわれるガスカールの短編集を
大江のかけがえのない恩師である仏文学者渡辺一夫が共訳、編集。



最近、ソレルの『暴力論』とともに岩波文庫で出た。
7つの短編が収められているが、渡辺一夫が初稿を起こした作品はない。
そういう意味で、渡辺一夫の名前が最初に冠されるのも変なものだと思う。





★『けものたち』あらすじ

ドイツ兵の捕虜となった40人のロシア人が、納屋へと押し込められ、
飢餓に喘いでいる冬の日に、6人のウクライナ人の捕虜が到着する。


彼ら6人の新入りは、爆撃で潰れた煙草屋から盗んだ
大量の煙草を持っていたために、捕虜全員に動揺を与える。



かくして、『死の家の記録』や『イワンデニーソヴィチの一日』にも
描かれているとおりに、煙草は貨幣の代わりとして流通しはじめる。



やがて、ふたりの勇敢な捕虜が納屋から抜け出して、近隣の貯蔵庫から
夜な夜な、ジャガイモを盗み出す芋泥棒として活躍する。
盗んだジャガイモは、煙草によって交換され、捕虜たちの空腹を満たした。


その納屋の前には、巡回サーカス団の動物小屋があり、
ライオンや熊が、捕虜たち同様に餓えに苦しんでいた。


動物小屋の番人エルンストは、動物たちに餌として肉塊を与えていた。
そこで、ある捕虜の知恵が、すべての顧客の取引を一手に引き受ける商売をあみだす。


彼は、エルンストが動物たちに与える肉塊を、煙草と交換して仕入れたのだ。


かくして、捕虜は肉を味わうが、一方で餌を与えられなくなった
ライオンや熊によって、激しい飢えからくる咆哮の嵐が巻き起こり、


その啼き声や叫び声に、捕虜たちは本能的な恐怖を感じる。
春が近づき、芋泥棒の足跡が雪の跡から見つかる。警官が納屋にやってきて
芋泥棒のふたりの捕虜を逮捕し、煙草は差し押さえられ、元の黙阿弥となる。


芋泥棒は、ピストルで射殺され、納屋の前に死体が投げ捨てられる。
懲罰として三日間の絶食を課せられた捕虜たちは、
けものたちの餌の肉塊と芋泥棒の死体と交換しようと画策しはじめる。





そのとき、ドイツの前線を破るロシアの大砲が鳴りひびく。完。


★感想
典型的な収容所文学だが、ドストエフスキーやソルジェニーツィンが、
ワンエピソードで扱うような主題で、短編を拵えてしまっている。


立川談志の言葉を借りれば、


セコな根多だねぇ、恥ずかしくないのかねえ、


という感じである。



捕虜たちの人間性を、探求して描いているわけではないので、
けものに人肉を喰わせたとしても、短編のトーンは変わらない。


要するに暗い。



ラストのロシアの大砲は、短編のオチとしてあざとすぎる。

けものたち・死者の時 (岩波文庫)


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posted by 信州読書会 宮澤 at 14:17| Comment(0) | フランス文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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