信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月15日

花筐(はながたみ) 白雲悠々―檀一雄作品選  檀一雄 講談社文芸文庫

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★あらすじ
アムステルダムからの帰国子女の少年、榊原は、
海辺の小さな町のカトリック系大学予備校に入学する。


しかし始業日の授業中に堂々と教室を後にした鵜飼と吉良を
本能的に追いかけてしまった榊原は、
入学早々にして学生生活からドロップアウトする。


やがて、鵜飼や吉良の無軌道で自暴自棄の生活に触れることで
榊原は、かつてないほどの精神的自由を得たように錯覚してゆく。


彼らから孤独を証としなけれ結ばれない種類の友情があることを学ぶ。
しかし、榊原がその禁断の友情を手にしたときに、
皮肉にも彼にとってかけがえのない人たちの命を奪ってしまう。


自己への誠実を求めるあまり、反社会的行為の中で破滅してゆく
若者の青春を、享楽的なロマンティシズムまで結晶させた作品。


★感想
檀一雄の24歳の作品。内容はほとんど尾崎豊の『15の夜』である。
三島由紀夫が少年時代に愛読したそうで、この作品に最大級の賛辞を捧げている。



三島の初期の短編『煙草』に登場する伊村や『仮面の告白』の近江などは、
そのマッチョで同性愛的な性格において、
『花筐』に登場する鵜飼という少年の性格の影響が非常に濃い。





ただ、檀一雄が三島由紀夫よりもすぐれているのは、
作品世界を一人称に限りなく近い三人称で描いた点であろう。


美少年の上級生、鵜飼に対立させて、
吉良という頭の巨きな異形の少年を登場させ、


ふたりを榊原の視点から、競わせて、エキセントリックな性格を描いている。


主人公の榊原の立場は、名探偵と怪盗の攻防をドキドキしながら見守る
探偵助手の少年みたいなものである。加速度が大きく、筋の展開が早い。


なので、三島の『仮面の告白』のように、主人公の独白がだらだらと続いて筋が死に、
詩的光景と装飾的比喩以外に、大した展開がないというような構成上の破綻は少ない。



社会のレールからドロップアウトした行き場のない少年たちが
羽目を外し、お道化ながら及ぶ、数々の自己破壊的な行為なかで、
当たりくじを引くように、死を引き当て、破滅する瞬間がまぶしい。



読みながら、上流階級の子弟が別荘地で無軌道に過ごすという
パヴェーゼの『丘の上の悪魔』という小説を思い出した。


祭りの最中に人は死なない、人が死ぬのは祭りの後である
というようなことを檀一雄は、エッセイで述べていたが、


二十代半ばでそういう人生訓を小説結末に盛り込んだ早熟さに舌を巻く。


文章に個性がある。詩的なエピソードが贅沢に詰まっている。



花筐・白雲悠々―檀一雄作品選 (講談社文芸文庫)


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posted by 信州読書会 宮澤 at 14:07| Comment(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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