信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月15日

こわれがめ クライスト 岩波文庫



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★あらすじ

オランダの僻村の村長兼裁判官アダムは、村の娘エーフェの部屋に夜這いする。
しかし、彼女の婚約者であるループレヒトと鉢合わせする。
慌てて逃げだすが、エーフェ宅の家宝のかめを壊してしまう。
その上、暗闇の中で、アダムはループレヒトに二回殴られる。


翌日、司法顧問官ワルターが村に査察に訪れる。
そこへ、エーフェの母マルテが、こわれがめの件でループレヒトを訴えたので、
ワルターの謁見のもとで、アダムを裁判官として裁判が開かれる。
裁判官のアダムは、ループレヒトに罪をなすりつけようとするが、
つぎつぎと真実が暴露され、窮地に陥る。


★感想
クライスト(1777〜1811)の喜劇。
クライストはすべての事件が起こった後で真実が明るみに出る


ソフィクレスの『オイディプス王』を念頭において制作したそうだが、
法廷劇という点で、アイスキュロスの『慈みの女神たち』に近い。


主人公のアダムは、モリエールの『タルチュフ 』のタルチュフに似ている。
特に、権力を笠に着た嘘つきであるところと、スケベなところが似ている。


喜劇の主人公の性格としてこの二点は、必要十分条件である。
その意味で、民衆喜劇のツボをおさえ、醍醐味を心得た作品であると思う。


『タルチュフ』においては国王が機械仕掛けの神であったが、
『こわれがめ』においては司法顧問官のワルターが、機械仕掛けの神である。
中盤から出ずっぱりのワルターがいなければ、アダムの嘘は解明されないので、
彼が機械仕掛けの神として君臨しているといえる。



一幕物の法廷喜劇なので、単純な構造である。展開は貧弱。
クライスト生前の上演は大失敗だったそうだ。


第12場は異曲があり、岩波文庫に併録されている。
異曲は長く、終りもすっきりしないので、切れ味に乏しい。


しかし、ループレヒトを国内勤務だと偽って民兵に招集し、実はアジアに派兵させ、
エーフェと二度と逢えないようにしようとする場面が強調されている。
結果的に、国家権力の欺瞞を批判的に描いているのは異曲のほうである。



ただ、決定版のアダムが畠を横切って逃げていく場面のほうが、喜劇としては面白い。
まあ、一番惹かれるのは『こわれがめ』という題名である。
落語っぽい題名で、吸引力がある。


全く余談だが、水戸黄門は喜劇の単純なフォーマットを踏まえている。
水戸黄門=機械仕掛けの神、嘘つき=悪代官と言う点で。
しかし、肝心の「スケベ」を担当するのが、
由美かおるの入浴シーンだけというのは解せない。


もっとも毎回、独創的な「スケベ」を創作すると、
町娘が毎度ひどい目にあって、昨今のゴールデンでは忌避されるから、
その部分を、マンネリズムでやりすごしているということだろう。
由美かおるの女優としての自意識がそれを許しているかには、少しだけ興味があるのだが…。


こわれがめ (岩波文庫)


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posted by 信州読書会 宮澤 at 13:48| Comment(0) | 戯曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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