信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月15日

光の雨 映画版

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光の雨 
ハピネット・ピクチャーズ 光の雨 特別版
★あらすじ

全共闘世代のCF監督、樽見(大杉漣)が『光の雨』を映画化することになった。


その映画のメイキングを阿南満也(萩原聖人)が担当することになる。


オーデションが行われ、若い役者たちが、『革命パルチザン』について


つたないながらも勉強し、議論しながら『光の雨』の映画撮影を進めていく。


山岳ベース内での総括シーンで、交番襲撃の場面を再現しながら、


玉井と浜田が殴りあうシーンがまで撮影が進むのだが、そこで中止になる


(劇中劇の劇中劇という二重のメタフィクション。観ていて途方に暮れる)





そして、「消えます。映画のために。」という書置きを残して樽見監督が蒸発。


原因は、監督の樽見が、受け取った一通の葉書だった。


そこには、学生時代に彼が密告したために、内ゲバで殺された友人からの短歌が記されていたのだ。


(その劇中短歌は、立松和平の盟友、絶叫短歌の歌人、福島泰樹のものである。)


結局監督は、いろいろ昔のこと思い出して、監督は映画が撮れなくなったらしい。


だらしないのだが、そのだらしなさが、全共闘世代への批判として演出されている。





『光の雨』の映画化は頓挫して、若者たちは残念会を居酒屋で開きながら、


冗談で、お互いの演技の総括を求めあっているうちに本気になり険悪なムードに発展する。


山岳ベースでの人間関係の破綻が、撮影現場の破綻になぞらえられている。





映画内で恋人関係だった役者たちが、実際に付き合い始めるというおまけつきである。
みんなでインターナショナルを肩を組んで歌うという牧歌的なシーンもある。

(この場面だけ観ると、大島渚監督の『日本春歌考 』の良さが再確認できる。)



メイキングを撮影していた阿南満也が監督を引き継ぎ、なんとかクランクアップさせる。






★感想


原作に出てきた阿南満也と高取美奈は予備校生カップルではなく、


それぞれ、メイキング監督と崖っぷちアイドルという設定になっている。





『光の雨』に、撮影現場というメタフィクションを導入することで、


現在の若い役者が、当時の革命戦士の若者に感情移入しようとする姿を描いている





総括の残酷なシーンも、あくまでも劇中劇なので、監督のカットが入って、


殺しあったもの同士が、次のシーンではタバコを吸って和やかに休憩するという


なんとも、微温的な、よくいえば、観客への配慮が行き届いた演出となっている。


また、『連合赤軍』という固有名詞もメンバーの実名も徹底的に排除されていた。


総括で犠牲になった若者たちへの追悼シーンが、律儀に織り交ぜられている。





監督は、『太陽にほえろ』のシンコの旦那、高橋伴明。





裕木奈江が、上杉和枝=永田洋子役である。なかなか憎らしくてよかった。低い声がいい。


(『硫黄島からの手紙』で二宮和也の女房役で出ていて、久々に存在を確認した。)


彼女は「男に媚びている」と女性週刊誌などでバッシングされていた時期があったが、


その頃の経験が皮肉にも、この映画で活かされているのを感じた。





小嶺麗奈もかなり久しぶりに観た。まだ芸能活動していんだという発見と感慨。


最近結婚した板谷由夏も出ていた。鳥羽潤も出てた。微妙に懐かしい人達だ。


みんな総括で穴に埋められていた。TVで観ないなと思ったら、穴に埋められていたのだ。





ビデオはGPミュージアムから出ている。Vシネマ専門のメーカーである。


メロリンQこと山本太郎(倉重鉄太郎=森恒夫)はVシネマのチンピラそのままである。


彼が「お前の総括を要求する!!」とか「敗北主義やないか!!」と関西弁でまくし立てるほど、


新左翼の用語の途方もない空虚さがあらわになるのが印象的だった。





小説で読むとこれらの用語も意味ありげだが、セリフになると恐ろしく醜悪である。


ヤクザの恐喝や因縁とかわらない、その空疎な響きに、やるせない思いを掻き立てられる。


そういう意味では、意図したかどうかは別として、新左翼言語に対しての批判となっている。





しかし、若者たちの下手な演技は、なんというか、観ていて困った。泡沫感に溢れていた。


学生サークルの演劇を、そのまま映画にしたような気恥ずかしさをおぼえさせられる。


立松和平の訛った声で、最後に小説の一節がとつとつと朗読される。やや、うんざりする演出。





青島武の脚本は、現在の若者の視点が描かれていて、とてもいいものだと思ったが、


山岳ベースでのリンチは、どうやっても密室劇で、映画的なスペクタクルに乏しい。


やっぱり小劇場で、演劇にするべき題材なんじゃないか、というのが正直な感想である。



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posted by 信州読書会 宮澤 at 13:26| Comment(0) | 連合赤軍関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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