信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月13日

バルタザール アナトール・フランス小説集6 白水社

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★あらすじ
エチオピアの黒人王バルタザールは、シバの女王バルキスに熱烈な恋情を抱く。
バルキスは危険を味わいたいというので、ふたりで変装して市の居酒屋に出かける。
そこで無銭飲食して店主と喧嘩になり、ふたりは河原に逃げ、その夜に激しく求め合う。
翌朝、河原で寝ていると通りかかった盗賊に捕まり、奴隷として売られそうになる。
バルタザールは抵抗し、盗賊にナイフで刺されるが、バルキスの護衛兵に救出される。


その後、バルキスは他の王に浮気して、バルタザールは捨てられる。


バルタザールは、愛の苦悩を忘れるため高い塔を建て、そこにこもり占星術を学ぶ。
その後、星に導かれて、厩の幼子に逢うために塔を下り、没薬を携え旅に出る。
道で黄金、乳香をもった二人の王と同行しマリアとともにいる幼子イエスに逢う。


★感想
芥川も翻訳したというA・フランスの短編。


芥川の短編は必ず何らかどんでん返しのようなオチをつけたがるが、
『バルタザール』は芥川が理想としたような鮮やかなオチがついている。


マタイの福音書の第2章11節に
「(東から来た博士が)生まれたばかりのイエスに、ひれ伏して拝み
黄金、乳香、没薬などの贈り物を捧げる」という一節があるが、
その博士たち(東方三賢人ととりあえず呼ばれているらしい)の
一人であるとされるバルタザールの遍歴を描いている。


彼が、女性の誘惑に打ち勝ってイエスのもとへやってきたという
因果をつけて物語の綾とした幻想的な短編である。


短編としては、すこぶる詩的で魅力に溢れている。
古書店主の息子に生まれ一生を本の中で過ごした
懐疑主義者のA・フランスらしい作品。



正直なところ、聖書を意匠として用いて幻想小説を書くという行為には、
作家の救いがたいニヒリズムを感じて、あまり好きではない。
聖書の一節から逆算して短編を作った感は否めない。計算趣味。


でも、うまいんだなあ。この短編。


アナトール・フランス小説集〈6〉バルタザール



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posted by 信州読書会 宮澤 at 12:57| Comment(0) | フランス文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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