信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月13日

病は気から モリエール 岩波文庫


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★あらすじ


医者にくいものにされ自分重病だと信じているアルゴンは、毎日、浣腸に勤しむ。
アルゴンは、娘のアンジェリックを主治医の甥に嫁がせようとするが、
アンジェリックにはクレアントという恋人がいて、お仕着せを嫌がる。
アルゴンの医者への盲信をなくすために、一族みんなで一芝居打つ。



★感想
モリエール晩年の三幕物。
『守銭奴』や『いやいやながら医者にされ』などの
自作を再編集したような自家撞着がある。


よって、内容は、いつもどおりのモリエールである。
まあ、アルゴンが大量の浣腸剤の代金を数える場面から劇は始まるので
モリエールの相変わらずの下ネタ好きがわかる。


やがてそれが、モリエールの医者や医学説への風刺に昇華されてゆく。
ただ、形式的には実験的な工夫がいろいろ施されている。


まず、幕間にミュージカルが挿入されている。


長年モリエール劇の作曲担当であり、
公私にわたって面倒を見てきたリュリが、国王ルイ14世の寵愛を受け、大出世し、
国立音楽舞踏アカデミー座長に就任したことに腹を立てた結果であるそうだ。



後任の作曲家のシャルパンティエに気合の入った
音楽を作らせて、恩知らずのリュリに意趣返しすべく、
モリエールは幕間劇のミュージカルをひねりだした。
彼の恨みつらみが創作意欲になったと思うと、とても人間味のある裏話だと思う。


第一場第六景に斬新な手法がある。
エウリピデスの『エレクトラ』でも用いられている
「アンティラベー」という対話形式があるのだが、
これは、通常一行のセリフを二人で分けて会話して、
劇的な緊張感を高める手法である。



一行対話の応酬である「ステコミュティアー」の変形版である。
モリエールの独創性は「アンティラベー」を喜劇に応用したことである。
ふたりの会話のズレたまま応酬させ、セリフをナンセンスにするという
斬新な手法を生み出している。これには、驚いた。



次に、驚いたのは、


「あんな芝居を書くモリエールというやつは、よっぽどどうにかしているんだよ」

などと劇中、主人公のアルガンにモリエール自身を揶揄させていることだ。
作品内で自己言及するモリエールの厚顔ぶりには、まいった。



最近、ちくま学芸文庫から出た『ベンヤミン・コレクション 4 』に
ベンヤミンによる『病は気から』の書評が出ていた。


ベンヤミンにせよベルクソンにせよ、
哲学者がモリエールに関心を持つのは、興味深いことである。


確かに、モリエールはヤケクソでいろいろやっている変な喜劇作家である。
哲学者が洞察の対象にとりあげたくなる魅力と才能がある。

病は気から (岩波文庫 赤 512-9)


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タグ:モリエール
posted by 信州読書会 宮澤 at 12:51| Comment(0) | 戯曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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