信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月13日

モルグ街の殺人事件 ポー 新潮文庫


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★あらすじ
モルグ街の四階建てアパートで老婦人とその娘が惨殺されるという事件が勃発。
老婦人は、首を剃刀で切断され、アパートの中庭に投げ落とされていた。
その娘は、暖炉の煙突の中に、逆さに入れられていた。



警察は、残忍で異常な事件を解決できない。
事件後、現場にかけつけた人々の証言に語られた
鋭い叫び声と、何語かわからない言葉、あと動物の毛が唯一の手がかり。


主人公私の友人、デュパンが、名推理で犯人を突き止める。


★感想


推理小説の古典。


私は、推理小説は、読まないのだが、
デュパンという人物には、惹かれるものがあって読んだ。
空想的憂鬱質で、教養をさりげなくほのめかす、嫌な人間である。
デュパンを、主人公の私の視点から描くという変則的な一人称小説。


デュパンというのは、過剰に教養があって、金利でつつましく暮らしている。
主人公と彼は、フランスの小さな図書館で同じ稀覯本を探していた縁で仲良くなる。
あまりにも、つつましいので、主人公と同居しているのである。



事件の推理に入る前に、主人公による
チェスと西洋の碁とホイストというゲームに関する考察が入る。
これが、デュパンの思考回路の説明になっていて、興味深い。


それから、主人公が、散歩中にある役者のことを考えていたのを、
まるで、頭の中身を覗いたかのようにデュパンが透視したエピソードが語られる。
精神分析が生まれる以前に、デュパンこそが精神分析医である。


前半部、デュパンの思考様式のエッセンスの描写が圧倒的に面白かった。
これだけ、独立していればヴァレリーの『ムッシュー・テスト』とかわらない作品だ。



「星をちらりと見ることが、星の輝きがいちばんよくわかるのだ」


というデュパンの言葉の通り、彼は、一見して瑣末な事象から
事件の情況そのものの認識的付置を引っくり返し、真実を露呈させるのである。



ただ、事件の真相、及び犯人は、
まあ、やや非現実的で、ああ、あうあうあ、である。



しかし、事件解決に当たって、重要人物を新聞広告で呼び出すという
手の込んだ仕掛けは、今もなお、色褪せないていない。スリリングである。
メディア文化の登場と、事件の解決が密接に関わった文化史的な側面もある。


いまの推理作家が書くとしたら、出会い系サイトに絡んだ殺人事件を
出会い系サイトを逆用して、犯人を誘き寄せ、突きとめるということになると思う。



重要なのは、ぺダントリーがセンスよく織り交ぜられていないと作品は本当にくだらなくなることだ。
謎解き自体には、個人的にあまり興味がもてない。


ポーは、作品内に、なかなか含蓄ある引用を展開している。そこが魅力的。
デュパンという人物自体が、書物の引用から出来ている非現実的な人物とも言える。

モルグ街の殺人事件



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posted by 信州読書会 宮澤 at 12:45| Comment(0) | アメリカ文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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