信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月13日

青梅雨 永井龍男 新潮文庫


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永井龍男を、初めて読んだ。短編集。
以下三作読んだだけだが、短編としての純度は恐るべき物がある。
読後、震えが止まらない。とんでもないものを見せられた気分。
これら三作品は、睡眠薬が鍵となっている。


『一個』
あと二ヶ月で定年を迎えるサラリーマン佐伯の心象風景を描いた作品。
電車の中で抱きかかえられた嬰児が、吊革に手を伸ばす姿から
サラリーマンの生活に固執する己を反省して、乗客と脳内会話を交わす。

定年後の家の崩壊が兆す。


娘が危篤になった深夜に柱時計がしゃべる


「この家は、つぶされる、かも、知れません。しかし、つぶされるまでは、
私が、こうして、支えて、います、この家は」


怖い・・・。



『冬の日』


出産後に産褥で娘が死んで二年後。再婚する婿に家屋を譲ることになった中年女性、登利は、
部屋の畳を張り替える。大晦日をひとりで過ごし、朝方、睡眠薬で眠った彼女は、
起き抜けに元日の夕焼けを見て、情欲に揺さぶられる。


娘婿、佐伯と肉体関係が出来てしまった登利は、
すべての事情を察している佐伯の同僚、進藤に向かって
自分が醜いせいだと責めてみせる。
進藤は善意の使者を装い、孫と別れる決心をした登利を誉め、慰める。


泥沼の醜い人間模様を、力一杯の善意で
なんとか丸く治めようとする人間の虚しい努力が切ない。




『青梅雨』


事業に失敗して服毒し心中する四人の家族の話。
ひとり養女がいる。全員高齢。
みんな湯に入り、浴衣に着替え、酒を一口呑んでから、致死量の睡眠薬を飲む。


心中が日常生活の延長で行われている。
死を前にして、家族がお互い研ぎ澄まされたやさしさに浸る。
ぬか雨の降る屋外の雰囲気が、幻惑的である。



この作家は、死を肯定しているのじゃないかと思った。
その屈託のない毒気に、肌が粟立つ。


いずれの短編も読んだ後で、登場人物たちの心象風景が、
じわじわと心に染み入り、
泣きたくなるような気分にさせられる。
なぜか、何度も再読したくなる。


青梅雨 (新潮文庫)



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posted by 信州読書会 宮澤 at 12:43| Comment(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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