信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月13日

居酒屋 ゾラ 新潮文庫 その一


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★あらすじ
14歳で色男ランチエと結婚したジェルヴェーズは、
子供二人をもうけて片田舎からパリに出てきた。


ランチエに捨てられるが、ブリキ職人クーポーに見初められ再婚。
しかし、クーポーの親戚から陰湿ないじめを受ける。彼との間にナナが生まれる。
ふたりはまじめに働き、ジェルヴェーズは、まとまった金を手にする。


そして隣人のグージェ親子からも支援を受けて、洗濯屋を開業する。
クーポーは仕事中屋根から落ちて酒びたりになる。
ジェルヴェーズは、働なくなったクーポーの分まで頑張り、洗濯屋は繁盛する。
彼女も虚栄心から、親戚を集めたパーティーなどに金を遣い、稼いだ以上に浪費する。


クーポーは、妻の成功に内心気を悪くして、酒をあおり、
とうとう街中で出くわしたジェルヴェーズの元旦那ランチエを
我が家に一緒に連れてきて、共同生活するという奇行に打って出る。


ジェルヴェーズは、ランチエに言い寄られ、肉体関係を再開する。
かくして、同じ屋根の下で、不倫が公然と行われる。ランチエが一家を食い物にする。
それを見て育ったナナは不良娘になる。一家は近所の鼻つまみになり、洗濯屋は廃業。
文無しになる。ナナは家出を繰り返し、やがて売春婦になって行方不明になる。


クーポーはアル中で頭がおかしくなって精神病院に入る。
ジェルヴェーズも酒に溺れ、売春するまでに落ちぶれるが、男に相手にされない。
クーポーは精神病院で60時間にわたりリゴドン踊りを踊って狂死。
その姿を見取ったジェルヴェーズも狂気に苛まされ、
狂った夫の物真似で糊口をしのぐ乞食となって、孤独死する。



★感想
アブサンというお酒がある。水島新司の野球漫画の題名にもなっている。
フランスの画家や作家をアル中にして殺した酒である。緑の妖精と呼ばれた。
にがよもぎに神経に有害な成分があり、製造販売禁止になった。
最近、アブサンも科学的な毒性の根拠なしということで一部解除されたらしい。
アブサンの毒素を抜いたといわれる酒にペルノというのがある。




以前、店で注文したら「なにか辛いことでもあったんですか?」とバーテンダーに心配された。
アルコール度40%。咽喉が焼けつく。ストレートで煽って、記憶を飛ばして店を破壊した(うそ)
『居酒屋』はこのアブサンが、いかに民衆を破滅させたかを描いた自然主義の傑作である。
とにかく、あらすじの通り、ひどい小説である。『女の一生』ほど人が死なないが、
人間が落ちぶれる姿が、容赦なくスキャンダラスに描かれている。


格差社会の果てにあるおぞましい世界を、これでもかと見せつけてくれる。
『イワン・デニーソヴィチの一日』の主人公ショーホフが、8年刑務所にいても
山犬になれず、自尊心の砦をますます固めるのに対して、
『居酒屋』のジェルヴェーズは、自尊心の砦を自ら崩壊させ、乞食まで転落する。



「何もかもおしまいだ。そう!なにもかもおしまいだ。
何もかもおしまいだとすれば、あたしはもうなんにもすることはない!」


ここまで、悟ってしまうまで、ジェルヴェーズの唯一の頼みだった人物がいた。
まじめな鍛治屋、グージェである。彼には、個人的にかなり惹きつけられた。
実際、グージェがいなかったら私はこの小説を読むのをやめていたと思う。



ゾラは、バルザックの「人間喜劇」にならって「ルーゴン・マッカール業書」を構想。
ジェルヴェーズの三人の子供のその後の人生を描いた小説も書いている。


ジェルヴェーズの娘ナナが高級売春婦となって破滅する小説が『ナナ』である。
ナナがなかなか笑わせてくれる。『居酒屋』の後半すでに主人公扱いである。


数々のとんでもないいたずらをしでかして、毎度殴られて、ますます素行が悪くなる。
『なしくずしの死』が今まですごいと思っていたが、『居酒屋』に比べるとまだ生易しい気がする。
面白すぎるシーンが満載だったので、また稿を改めて紹介したい。

居酒屋 (新潮文庫 (ソ-1-3))



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タグ:ゾラ
posted by 信州読書会 宮澤 at 12:25| Comment(0) | フランス文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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