信州読書会 書評と備忘録

世界文学・純文学・ノンフィクションの書評と映画の感想です。長野市では毎週土曜日に読書会を行っています。 スカイプで読書会を行っています。詳しくはこちら → 『信州読書会』 
Facebookページ
『信州読書会』 
YouTubeチャンネル
YouTubeチャンネル「信州読書会」
*メールアドレス
名前

 

2013年06月13日

ドン・ジュアン モリエール 岩波文庫

sponsored link









★あらすじ
妻エルヴィールを捨ててアレキサンダー大王よろしく漁色の旅に出た
ドン・ジュアンとその従僕スガナレルはシチリア島に到着。
しかし、ドン・ジュアンが修道院の柵を乗り越えて誘惑し、
妻に娶ったエルヴィールが、追いかけてくる。


下手な言い訳で彼女を追い返したため、恨みを買い、神の罰が下ると脅される。
そして、ドン・ジュアンは、彼女の兄弟に命を狙われる。


また、ドン・ジュアンは無神論者で、その過激な思想から
父親のドン・ルイに不信仰を諌められる。
結局、無神論者から改宗したように装うが、
神の怒りを買い、雷に打たれて死ぬ。



★感想
モリエールの喜劇を四作読みましたが、『ドン・ジュアン』が今のところ一番面白かったです。
この作品は、ドン・ジュアンと従僕スガナレルのかけあい漫才が楽しいドタバタ喜劇です。
漁色家として名高いドン・ジュアンですが、女性の口説き文句が笑えました。


「ほかの女なら好きになるのに半年もかかるところを、
ほんの十五分であなたを好きになってしまいました」


こういうセリフでシチリア島の百姓娘を口説くのですが、
心にもないセリフや詭弁を次々と繰り出すドン・ジュアンの饒舌が圧巻です。


途中、追っ手に追われて、ドン・ジュアンとスガナレルが変装するのですが、
スガナレルは質屋で見つけた医者の衣装をまとい、本当に医者に間違われます。



この挿話を、膨らませてできた喜劇が、先日紹介した
『いやいやながら医者にされ』ということがわかりました。


モリエールはスガナレルを気に入っていたようで、
スガナレルを何度も自分の戯曲に登場させています。
「スガナレルもの」というジャンルを確立した過程がわかります。
マイナーな主題として変奏されて生き続ける、落語の与太郎みたいな登場人物です。
この人物は、思いがけないところに毎年花を咲かせる野草のような魅力があります。


ドン・ジュアンが徹底した無神論者で合理主義者であるところが喜劇の骨格です。
この視点は、啓蒙主義者ヴォルテールの『カンディード 』を完全に先取りしています。



『タルチュフ』同様に、当時勢力のあったカルト教団の『聖体秘蹟教会』に目をつけられ、
大ヒットを飛ばしたのにもかかわらず、自発的に興行を中止したそうです。
さらに、この時期にラシーヌとも喧嘩して、心労から病に倒れて危篤になったそうです。


スペインのドン・ジュアン伝説はバイロンやプーシキンなどの
ロマン主義者によってまじめに取り上げられたところがありますが、
ドン・ジュアンを『無神論者かつ合理主義者の漁色家』としてとらえ喜劇化した
モリエールの手腕の方が、ロマン主義者のものよりも魅力的に思えました。
そして、サドの諸作品につながる問題性を孕んだ作品だと思いました。

ドン・ジュアン (岩波文庫)


sponsored link







ラベル:モリエール
posted by 信州読書会 宮澤 at 12:13| Comment(0) | 戯曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。