信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月13日

メーデイア エウリーピデース ギリシア悲劇全集5所収


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★あらすじ
イアーソーンに嫁ぎ片田舎からコリントスにやって来たメディアは
若返りの術を知り魔術の心得のある勝ち気な女性である。
イアーソーンとのあいだにふたりの男児をもうける。


イアーソーンは王家の縁故ほしさに色気を出してメーデイアを捨て
コリントスの王クレーオンの娘クラウケーと結婚する。
クレーオンは気性の激しいメーデイアの復讐を恐れ、彼女を追放しようとする。
メーデイアは子供たちのみのうえを思案するため、一日猶予をもらう。



突然の離婚と追放という悲劇に見舞われたメーデイアは
元夫を詰問し、翻意を促すが屁理屈で応酬され拒絶される。



怒り狂い復讐を決意したメーデイアは、
子宝に恵まれず、諸国を相談してまわるアテーナイの王アイゲウスに接触し、
復讐の意を打ち明け、実行後の自身の身柄を匿ってくれるよう懇願する。


お人よしのアイゲウスは、メーデイアの気迫に圧倒されて了承した上、
神々にメーデイアの安否まで誓わされる。



ふたりの子供にフッ化水素のような猛毒を塗りつけた薄絹の長衣と黄金の冠をもたせ、
ご祝儀としてクラウケーに渡し、その父クレーオンもろとも毒殺するという復讐計画を立てる。
イアーソーンを離婚を認めたと殊勝な嘘をついて騙し、
我が子を使ってクラウケーにご祝儀を届けさせる。


かくしてクラウケーとクレーオンは猛毒によって火達磨になって死ぬ。
メーデイアは暗殺実行犯となった我が子を案じて自らの手で始末する。



暗殺を知ったイアーソーンはメーデイアのもとを訪れ、
神々によって守られた彼女は竜車に乗って登場。
再び責任のなすりつけあいの夫婦喧嘩するが、元夫の死を予言して竜車で空の彼方に去る。



★感想
心の葛藤から連続殺人を犯すにいたった女を描いた悲劇。全編血に飢えている。
女の連続殺人犯=感情の起伏が激しいという紋切型を端的なぞってくれており
週刊誌やワイドショーに掻きたてられる類の下世話な好奇心を大いに刺激してくれる。
エウリピデスが近現代の作家の想像力を刺激するところは、こういうところに由来する。



「私ってバカな女」とか「女は弱いもの」とか「女は泣くように生まれついているの」とか
元夫イアーソーンに、あまりに見え透いたセリフ吐いて演技する場面は出色である。
その実、腹の中では、恐るべき復讐を計画し、さらに実行するのである。恐ろしいもんだ。


感情の起伏が激しいだけでなく、それを自在に操るのだから女性である。始末に終えない。



オレステースは実母殺しの罪で復讐の女神エリーニュスによって神々の法廷にひっぱられたが、
子殺しのメーデイアは、なんと自ら復讐の女神になって法廷にかけられずに飛んでってしまう。
おいおいアイゲウスと再婚しちゃうの? と突っ込みを入れたのは私だけではあるまい。



読者としてはメーデイアが神々の法廷で裁かれる続編がみたいところである。
でもそこを描かないエイリピデスは社会的良心の欠如している。どうかと思う。やや軽蔑。


訳者解説で、三島由紀夫の生前最後の短編集『殉教 』所収の『獅子』という短編は
『メーデイア』を現代風にアレンジした物だということを知った。



未読なので本棚から引っ張りだしてみると、確かに
《エウリピデスの悲劇『メーデイア』に拠る》と副題が添えられている。
早速読み始めているところである。楽しみだ。こういう楽しみは読書家の一番の愉しみ。


ちなみにコルネイユも『メーデイア』を翻案して『メデ』を創作したそうだ。


エウリーピデース I ギリシア悲劇全集(5)


殉教 (新潮文庫)

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posted by 信州読書会 宮澤 at 12:00| Comment(0) | ギリシア古典 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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