信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月11日

大転落 イーヴリン・ウォー 岩波文庫


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★あらすじ
名門のパブリックスクール、スコーン・カレッジの学生で好青年の
ポール・ペニーフェザーは学友の乱痴気パーティーに巻き込まれ、
下半身まるだしで中庭を走った廉で放校処分となる。



ラナバの高校の教師として職を得て、
ホモで重婚常習犯グライムズ、異端の聖職者プレンターガスト、
詐欺師のフィルブリックという奇矯な同僚の先生方ととともに
上流階級の子弟を教育することになる。


この生意気な生徒たちは、知的な学級崩壊を目論み反抗的である。


1. 朝、生徒一人一人がおはようございますを連発する。
2. 自己紹介をさせるとみんな同じ名前を名乗る。
3. 徒競走させてヨーイドンといっても動かない。走り出すと集団で行方を晦まして帰って来ない。 
4. 音楽会をやると昼食のプリンがまずいと言って国歌斉唱を拒否。



そんなバカな生徒にも腹を立てず、品のよい無関心を心得ているポールはやがて
ある生徒の父兄である大富豪で美女のベスト・チェトウイント夫人と懇意になり学校を辞職。
婚約を交わし、結婚準備の傍ら、彼女が南米で展開する興行の事業を手伝うが、
売春斡旋容疑で逮捕され、七年の懲役刑でムショにうたれる。


刑務所でなぜか、同僚のグライムズをはじめとする学校の同僚と再会する。
その後、チェトウイント夫人の尽力で盲腸を理由にサナトリウムに搬送され
手術中に死亡したことにして脱獄するが、気まぐれな夫人に捨てられる。


しかたないので、偽名でスコーン・カレッジに舞い戻り、学生生活をやりなおす。



★感想
ウォーが26歳で発表した処女作。
表紙にその頃のウォーの写真がある。
一見して不遜極まりない面構えであることがわかるが、
それに負けないくらい、この小説は人を喰った内容で、シュールな笑いに満ちている。


こんなに笑ったのはいつぶりだろうというくらいたっぷり笑わせてくれた。


とくに同僚たちとの会話の不真面目なかましあいが笑える。知的なユーモアの話柄が豊富である。
その一端でも紹介できればと切に思うのだが、
どれもふくみ笑いを誘うものなので前後の文脈なしの紹介はかなり難しい。

面白かったセリフや言い回しくらいはちょっと紹介したい。



「手遅れ、もう手遅れ。この世で一番悲しい言葉だねえ」(グライムズ後悔のセリフ)
「隠れた元気を引き出すには、衣替えが一番だ」(グライムズ無責任な慰めのセリフ)
「冒涜的人肉市場に快楽を求める人間吸血鬼」(刑務所所長によるポールへの罵倒)
「ぼくと出会う人間はどうしてこの種の自叙伝が得意なんだろう」(ポール困惑のつぶやき)
「いきおいでプルーストを一揃え買ってしまった。」(感極まったポールの行動。マルセイユにて。)



全編、社会的良心のかけらもない最低なユーモア小説だが、唯一教訓があるとすれば、
「人生は遊園地ある大車輪のようなもので輪の中心に静止した場所がある。
みんなそこにしがみつこうとするが、端っこで振り回されるのを愉しむものもいる。
重要なのは、全然乗る必要がないこと」という内容のセリフである。



なかなか含蓄がある。


スコーン・カレッジは、ウォーの卒業したオックス・フォードがモデルである。
まあ、オックス・フォードくらいの名門学校にいたことがあれば、
どんなに世の中をはずれていようが、渡りきれるという自信に満ちたイヤミな小説でもある。


英国流の「知的な青年のポーズ」を学びたいならお薦めしたい。期待に充分こたえてくれる。


大転落 (岩波文庫)



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posted by 信州読書会 宮澤 at 11:51| Comment(0) | イーヴリン・ウォー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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