信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月11日

百 色川武大 新潮文庫

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退役軍人で95歳のやや耄碌した父と50過ぎの作家の親子関係を描いた作品。
敗戦後、孤独にたてこもり生きてきた父と
長男として家を継がなかった私の共通点は、
お互いが諦念と僅かのわがままによって
なんとか自分自身と折り合いをつけて生き延びていることである。



この短編を読んで思い出すのは安岡章太郎の『走れトマホーク』なのだが、
劣等感を持って育った息子と戦後退役して老耄する父親という構図が似ている。



直接の葛藤を経なかった長男と父の関係というのは、
どうしても父の遠慮に比重がかかる。
よって両者の決定的な衝突を回避されている。


まあ、常に父親は長男を対等の存在として観るし
ある種の共犯者意識を持っているのだろう。
(私は次男なのでそういう感じとは無縁であるが…)
そういう親子の心理の綾を描いた点で貴重な短編である。


『熊がな。庭に入ってきている。皆で探せ』という父の命令は、
長男への屈折した遠慮が自己韜晦として現われたものに思えてならない。



老人は耄碌したふりをして、真実を掴んでいることがある。


百 (新潮文庫)



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ラベル:色川武大
posted by 信州読書会 宮澤 at 11:49| Comment(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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