信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月11日

青い麦 コレット 新潮文庫

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★あらすじ
パリからやってきて毎年ブルターニュの海辺の同じ別荘で過ごす二組の家族。
両家の16歳の少年フィレと15歳の少女ヴァンカは、幼馴染である。


この夏、フィレは避暑にやってきた30歳のマダム・ダルレーと知り合い、
童貞を捨てるが、気まぐれなダルレーの御するがままである。
未練たっぷりのフィレを置き去りにして彼女は、彼の前から消える。


ダルレーに嘘をつかれたフィレは、嘘をつくことをおぼえる。


兄妹のように育ったフィレの大人びた様子と、欲望の煩悶をみたヴァンカは途惑う。
彼らは暗黙の了解のもと許婚になるが、ダルレーの肉感を忘れられないフィレは
ヴァンカを心から愛せるかどうか悩む。ヴァンカは、噂ですべての事実を知る。
彼らは心の中でお互いを非難しあうが、上ずった気持ちのままに夜の庭で抱き合う。
結果、僅かな苦痛と、僅かな喜びを分かち合ったことを確認する。



★感想
コレットが50歳のときに別荘で書いた作品。散文詩的な味わいがある。
堀口大學氏の翻訳は、やや古臭いが、手が込んでいて読み応えがある。
初体験の苦味がみずみずしく描かれている。


青い麦というのは、踏みにじった時に刺激的な匂いがするそうだ。だそうだ!!


功名成して、こういう読者の期待の地平を一歩も踏み外さない作品を書くいうことに
商業的な意味以外になんの意味があるのかいぶかしく思ったのが一番の感想だ。



しかし、読み飛ばしながらも、巧みな心理描写で立ち止まった点が
いくつかあるのでかなり読ませる作品だとは思う。


特に、少年と少女の会話において、紋切型の恋物語を演じていて恥ずかしいという
感情をきちんと語らせているので、作者の作品に対する批判的な枠組みは成されている。
要するに、コレットの自意識のまともさが確認できるので、読者は安心できる。
それが一番重要だ。それを感じなかったら、たぶん、途中で放り出したくなる作品である。


両家の母が、翻訳では一部「影」と名指されている。この意味がよくわからなかった。


第二次性徴を過ぎたばかりの少年と少女の恋愛をテーマにひとつ小説を書こうとすれば、
『青い麦』の中の表現されたものと、同じことを書いてしてしまうのは
避けがたいという意味では結局、古典である。現代の古典。


そして作家を志す読者にとって多分に教育的な小説である気もする。


青い麦 (新潮文庫)

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タグ:コレット
posted by 信州読書会 宮澤 at 11:40| Comment(0) | フランス文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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