信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月11日

高慢と偏見 ジェーン・オースティン 岩波文庫


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★あらすじ

ハートフォードシアという田舎の上流階級ベネット一家。
その家庭は、家主ベネット氏を除くと、妻と五人姉妹の女の都である。
その近所に、ビングリーという独身の紳士が引っ越してくる。
そして、彼の友人で大資産家のダーシーも遊びに来る。
ベネット家では五人姉妹の長女ジェーン、次女エリザベスの結婚のため
ジェーンはビングリーと、エリザベスはダーシーとお付き合いさせる。
さまざまな迂回路を経て、彼らはめでたく結ばれる。



★感想

夏目漱石が則天去私の精神を表すと位置付けた作品。(なぜかは不明)
モームの世界の十大小説にも選ばれている。
21歳のオースティンが牧師館の台所で家事の合間に書き継いだ驚異の作品。



偉大なる家庭小説である。細かい章立ては新聞小説を思わせる。
漱石が新聞小説を書いたときオースティンの構成を念頭に置いたことは間違いない。
目くるめく展開があり、人物の性格も多様で、構成は完全で破綻がない。
橋田寿賀子の『渡る世間は鬼ばかり』にも多大な影響を与えている。たぶん。



話の中心はエリザベスとダーシーの恋愛物語である。
初対面の印象がお互い最悪である。(なんかよくありがちな設定だが…)すれ違いを重ねるが、
しかし、ダーシーとエリザベスの「高慢と偏見」の反目が徐々に、「謙遜と寛容」に融和する。


エリザベスは、つむじ曲がりで洞察力と分別に富み、そんなに器量はよくないが
やさしさや正義感があり、誰よりも感受性に溢れている。



その感受性はなによりも、人としてなにが真っ当なのかという問題に対して働く。
エリザベスの感受性は、自らの虚栄心や偏見や自己欺瞞を絶えず発見し克服する。
そんなエリザベスの感受性が、ダーシーの高慢な心に隠されていた感受性と共振する。



ふたりは反目しながら惹かれあうが、最大の障壁は彼らの階級の違いである。
ダーシーは資産家で都会の上流階級、エリザベスは資産のない田舎の上流階級。
その階級差を情熱によってダーシーが乗り越えるというところにロマンがある。
特に、ダーシーがエリザベスに与えた手紙は圧巻。すばらしい。





登場人物の愚劣ぶりをランキングにしてみた。


1位、妹のリディア。お馬鹿さんぶりとはしゃぎぶりは救いがたい。殺意を覚える。


2位、従兄弟のコリンズ。慇懃無礼、空気の読めない人。手紙が暑苦しい。


3位、ベネット家の母。おちつきがない。思ったことを全部口にする困り者。


4位、ベネット家の父。自らの吐く皮肉に悦に入り、結果的に足元をすくわれた。
  ウィカムと決闘して銃弾に倒れていたほうが彼の人生はいっそ幸福だっただろう。


           
同じく、いい仕事をした登場人物のランキング。


1位、叔母のガードナー夫人。ウィカムの胡散臭さを女の直感で最初に見抜いた。


2位、家政婦のレノルズ夫人。ダーシーを絶賛し、エリザベスに印象付けた。


3位、叔父のガードナー。何の役にもたっていないが、とりあえず、すぐにロンドンに行った。



もし今、エリザベスみたいな女性がいたら、結婚では幸せになれないと思う。
現実的には厳しい。現代の日本の男性にダーシーみたいな紳士はまず少ない。
かしこいだけに婚期を逸する気がする。独身のキャリアウーマンが似合う。



この小説の屈託のないハッピーエンドっぷりは、
生涯独身だったオースティンの夢を体現しているように思えてならない。
構成が稠密。心理の綾が職人芸で織り成されている。傑作だと思う。かなりお薦め。
高慢と偏見〈上〉 (岩波文庫)


高慢と偏見〈下〉 (岩波文庫)



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posted by 信州読書会 宮澤 at 11:37| Comment(0) | イギリス文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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