信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月11日

トロイアの女 エウリピデス 筑摩世界文学大系4


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筑摩世界文学大系〈4〉ギリシア・ローマ劇集 (1972年)

★あらすじ
アガメムノーンによって落城されたトロイでは、
勝利に酔うギリシア勢によって男は皆殺しにされる。
女は奴隷や夜伽の相手として、戦利品とともに
各地に分配され連れてゆかれる運命にあった。
トロイの女たちはあばら家に隔離され、
誰の元へ連れてゆかれるか告げられるのを待っている。



生き残ったへカベ(プリアモスの王妃)はオデュッセウスの奴隷となる。
カサンドラは、アガメムノーンの夜伽役となる。
ポリュセクネはアキレウスの墓前で殉死。
アンドロマケ(へクトールの妃)はオデュッセウス夜伽役となる。


トロイ戦争の発端となった浮気を犯したヘレネは
メラネオスの手にもどりギリシアに連れ戻される。
しかし、ギリシアの女たちに女の操の守らぬとどうなるか教えるため
見せしめに処刑してやるとメラネオスに通告される。



悪女ヘレネは神々の名のもとに浮気を不慮の事故と言い訳するが、
へカベが、その言い訳をことごとく論駁し、ヘレネは初めから浮気性の快楽主義者で
操を守る気など毛頭なかったとメラネオスに訴える。


祖国が滅んでもなお、ヘカベによる嫁いびりが展開され、姑の執念をみせる。
一方、オデュッセウスは、ヘクトールとアンドロマケの一粒胤である
アステュアクナスをトロイの城壁から突き落として殺すよう命じ、実行される。


へカベは逆縁を嘆きながら、孫の骸を自らの手で埋葬する。
彼女の目の前で今や廃墟となったトロイの城に火がつけられ、焼け落ちる。



★感想
修辞は巧みにして心はないと定評のエウリピデスの作品。
捕虜となり身請け人のくじびき結果を待つトロイの女たちがコロスを形成する。


祖国の滅亡を嘆くよりも、どこで奴隷になるかを思案しはじめてしまう
コロスの女たちのたくましさがなんだかとってもリアリステック。
(ここまでを描いてしまう悲劇作家エウリピデスの臆面のなさにやや鼻白まないでもないが…)



亡国の焼け跡で、すでに戦後を生きはじめる女性のリアリズムが、
この悲劇の主調低音をなすように私には思えた。


「幸薄きものの雅は、調べなき悲運の嘆きのみ」と
悲嘆にくれながらも気品を失わないヘカベが、運命の迫害により
王妃から毒蝮三太夫のいうところの汚いババアに
成り果ててゆくすがたが哀しい。
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posted by 信州読書会 宮澤 at 11:35| Comment(0) | ギリシア古典 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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