信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月11日

あさま山荘1972 上・下・続 坂口弘 彩流社


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私の学生時代には、学生運動もないし、大学封鎖なんてなかったし、デモもなかった。
新左翼といわれてもピンとこない。大学自治会は鬱陶しいなと思ったぐらいである
勤めた会社には労働組合もなかったし、小口の株式投資に熱中する人はいても


まわりにマルクスやレーニンを読んで資本主義を批判するような人は全くいなかった。
私は政治意識には無縁だし、シラケる以前に何にシラケるかもわかっていない世代である。
「遅れてきた青年」以前に、「どこにいるのかわからない青年」である。
それでも、読書しているうちに自分なりに「あさま山荘事件」に興味を持ったので、


今日図書館で事件の主犯であり死刑判決を受けた坂口弘が
事件を振り返って書いた手記『あさま山荘事件1972』を読んでみた。


全共闘世代の方々はこの事件に対して後ろめたい感情を抱いていて、口をつぐんでいる。
まじめに学生運動に取り組んだ人ほどそうなのだろう。この本を読んでよくわかった気がする。


借りて読もうかと思ったが、長野県立図書館では郷土資料のコーナーにあって、
貸し出し不可だった。まあ、長野県で起こった事件なのだから郷土資料なのだろう。
一応書庫から出してもらえば借りられるのだが、司書の方に探してもらうと


変に勘ぐられたらはずかしいし、こういう本にのめりこむのは精神衛生上よろしくないので、
図書館で上・下・続の三冊をとばし読みしてきた。くたびれた。かなり動揺もした。


筆者の生い立ちと、大学の中退、労働者としてのオルグ活動の遍歴、あさま山荘事件、
そして14人の同志の総括が、当事者しかしりえない生々しさで語られている。


警察に追いつめられていく過程で、連合赤軍が狂気に陥っていったのがよくわかった。
14人を処刑して埋めていくくだりは、読んでいてかなりきつかったので読み飛ばした。
自分がやらなければ殺されるという、囚人のジレンマみたいな情況であったそうだ。


マルクスもレーニンもトロツキーも毛沢東も、仲間を殺すための理論に
勝手に組み替えられてゆく。サルトルの『他者は地獄である』そのまま。
暴力は自己正当化の手段になっていく。唯物論も同志の死体への唯物論になる。


それまでは、連帯意識を高めるためにみんなで労働歌やインターナショナルを
歌っていたのだが、3人処刑したところで、歌をうたうのをやめるというくだりがあった。
そこから人間性を放棄した、身もフタもない揚げ足とりがはじまり、
相互不信と主導権争いによる総括が14人を殺すまで加速していったそうだ。


連合赤軍の人たちがマルクスやレーニンをしっかり読み込んでいたとは到底思えない。


それよりも、ベトナム戦争や米中対立などの時代的な高揚感の中で、活動していたのだろう。
場当たり的な感情が理論によって糊塗されて、14人の総括につながったことがわかる。


普通に学生生活したり、恋愛をしたりで青春時代をすごせたはずなのに、学生運動に入れ込んで
やめるタイミングを失い、いつのまにか社会に戻れなくなってしまった若者たちなのである。
連合赤軍のメンバーがお互いに学生気分を濃厚に引きずって活動しているのが描かれていた。
活動家同士の恋愛の嫉妬や、痴情のもつれなどが総括の原因になったりしてもいる。


そういう意味では、今の学生と何らかわらないメンタリティーを持った人たちだったことがわかった。
むしろ今の学生よりも濃厚な人付き合いをし、貧しいながらも青春謳歌していて、人間的である。
それが、ある一線を越えると「革命」の美名に陶酔して、強盗や総括を行うに至るのである。


全共闘世代の連合赤軍に対する後ろめたさは、同時代の青春を過ごした共感から生まれている。
こんなことはすでに言い尽くされているのだろうが、本書を読んで改めて実感した。


しかし、こういう手記を読むと、読者は一種の共犯者意識を植え付けられることは否めない。
筆者へのストックホルム症候群ともいえる感情移入に襲われる。正直読んでいて怖かった。


あさま山荘1972〈上〉


あさま山荘1972〈下〉

続 あさま山荘1972



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ラベル:坂口弘
posted by 信州読書会 宮澤 at 11:18| Comment(0) | 連合赤軍関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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