信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月11日

エーレクトラー エウリーピデース ギリシア悲劇全集7 岩波書店


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エウリーピデース III ギリシア悲劇全集(7)  『エーレクトラー』松本 仁助,訳
★あらすじ
本ブログで以前紹介したアイスキュロスの『コエーポロイ』における
オレステスの復讐劇を、その姉「エレクトラ」を主人公として翻案した作品。



トロイ戦争から帰国した父アガメムノーンの暗殺後、
オレステスはアガメムノーンの養育係である老人に助けられ、
祖国アルゴスからポーキス人の土地へ亡命し、
ピュラデスの父親ストロピウスに匿われた。


成人したオレステスは、親友ピュラデスと共にアルゴスへ密かに侵入。
父の墓前に自らの髪房を供え、アイギストスへの復讐を誓う。



一方、姉のエレクトラは、アイギストスと母クリュタイメーストラーに疎まれ、
城を追い出されて、農夫に嫁に出されていた。
その農夫は、徳の高い人で、エレクトラの処女に手をつけなかった。
ジッドのいうところの「白い結婚」である。偽装結婚。


オレステスとピュラデスは農婦になったエレクトラと再会する。復讐計画を立て、実行する。


まず、アイギストスがニンフ祭で子牛を生贄にしているところに
オレステスが客人を装ってもぐりこみ、子牛の解体の際に、アイギストスを殺害する。


その直後、エレクトラが子供を産んだと偽って、生後10日のお祝いに
母、クリュタイメーストラーをあばら家の我が家へとに招く。


あばら家の入り口で、久々に再会した彼女たちは、
父アガメヌノーンの暗殺をめぐって、華々しい親子喧嘩し、
その後で、エレクトラは、母を家の中に、孫をえさに誘い込む。
運び込んであったアイギストスの遺体のそばで、オレステスに母を殺害させる。


すると、クリュタイメーストラーの兄カストールが機械仕掛けの神として登場し、
実母殺しの罪は、この場では、アポロンの神託なので見逃してやるが、
オレステスにはアテーナイで神による母殺しの裁判を受けよと宣告。
エレクトラにはピュラデスと結婚してアルゴスを立ち去れと告げる。
エレクトラとオレステスは永遠の別れを悲しみながら、それぞれの旅路につく。



★感想
エレクトラの気性の激しさを描いた復讐の悲劇。
また、エレクトラとクリュタイメーストラーの母と娘の烈しい喧嘩がある。ここが山場。


ソフォクレスも『エーレクトラー』を書いているのだが、すみません未読です。
まあ、この悲劇はいつもながらエウリピデスらしい、ライトなつくりになっている。



一番気になったのは、エレクトラの夫である名前もない農夫。都合のいい登場人物だ。
役名「農夫」なのに、筋上で重要な役割を担っている。ギリシア悲劇としては邪道の感あり。
ひそかに彼は『機械仕掛けの神』を演じている。エウリピデスらしい人物構成である。


この農夫は、エレクトラと結婚させられ、夜の生活もないまま、暗殺の手伝いまでさせられ
最後は金を握らされて、むりやりエレクトラトと別れさせられるのだ。みじめだ。


まあ、エレクトラと偽装結婚までした農夫は、革命家の活動の支援者といった趣があり、
彼のあばら家が、山岳アジトにすら思えてくるのが、面白いといえば面白い。のか?


エレクトラが、この農夫まで総括してオレステスに殺させたら、とんでもない作品になっただろう。
血に飢えたラシーヌだったら、この農夫さえもアイギストスのスパイに仕立てて、政治劇の中で殺してしまうと思う。たぶん。


アイスキュロスの『コエーポロイ』の城での暗殺劇と違って、
アイギストスを野原で、クリュタイメーストラーを農家で、ゲリラ的に暗殺したのが
エウリピデスのオリジナリティーである。よって陰惨極まりない仕上がりになっている。



あばら家に向かってくる母の姿を久々に目にして、暗殺をためらいはじめ、
さらにはアポロンの神託さえも「悪魔の神託ではないか」疑い始めたオレステスを
「女々しくなって臆病者!!」と罵り、弟に実母殺しを扇動するエレクトラは、狂女である。


そして、母親とあばら家の入り口で、父親の暗殺の件で散々喧嘩して激昂したのに
殺す直前となって「貧しい家ですがお入りください、服を汚さないようにご注意ください」
と急に慇懃な態度で、母を誘い込むエレクトラの豹変ぶりは、かなり怖い。


オレステスは復讐の女神に苛まされて狂気におちいり、神々の法廷へ出頭するが、
エレクトラは、再びピュラデスと偽装結婚して、超法規的措置で国外亡命。
女性革命闘士による内ゲバ闘争とも読める点で、後世に読みかえのきく悲劇作品ではある。


オニールの『喪服の似合うエレクトラ 』を読もうと思っているので、一応読んでみた。


エウリーピデース III ギリシア悲劇全集(7)

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ラベル:エウリピデス
posted by 信州読書会 宮澤 at 11:17| Comment(0) | ギリシア古典 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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