信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月11日

タウリケーのイーピゲネイア エウリーピーデス 岩波文庫

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★あらすじ
アガメムノーンのトロイ攻めの前に襲った嵐を鎮めるために
イーピゲネイアは人身御供として咽喉を切り裂かれ、生贄にされる。


『タウリケーのイーピゲネイア』は殺されたはずのイーピゲネイアが
女神アルテミスによって、死の直前に鹿とすり返られて、連れ去られ、
タウリケーという異国に辿りつき、アルテミスの巫女として仕え生き残ったという設定。


アイスキュロスの『アガメムノーン』に語られたアガメムノーンの悲劇の死あと
息子オレステースは、友人のピュラデースに協力をえて
実母クリュタイメーストラとその愛人アイギストスを殺害し、父の仇討ちをする。


その後いろいろあって、アポロンの神託により女神アルテミスの木像を手に入れるため
ピュラデースとともにタウリケーへとやってくるが、海辺で牛飼いにつかまる。


姉のイーピゲネイアは巫女として、
タウリケーにやって来て捕らえられた異邦人を
アルテミスの祭壇に、生贄として捧げる祭儀を行う義務があった。


彼女の元に、生贄として弟オレステースとピュラデースが連れてこられ
姉と弟は、はじめこそお互いの正体がわからなかったが、
会話のしているうちに感動の再会を果たしていたことに気がつく(ここが山場)


イーピゲネイアは、タウリケー王トーアスを騙して
女神アルテミスの木像を盗み、弟たちと船でタウリケーを脱出する。
(トーアスを騙して浜辺に三人で行く場面は非常にうまくできている。
あと追っ手に蹴りを入れたりするオレステースが笑える。)


★感想
読んでみてわかったけれど、これはハッピーエンドなので正確には悲劇ではないです。
『アガメムノーン』のように狂った登場人物はでてこないし、
最後に出てくるアテーナイ(機械仕掛けの神)も辻褄合わせとしか思えない。


さらにすごいことには、コロスまでもがイーピゲネイアに説得されて協力しはじめ、
海に逃げだすオレシテースの模様を、トーアスに報告しに来た使者に
嘘をつくというかたちで、悲劇を回避する役を演じてしまっている。



エウリピデスの作品は、これがもちろん私がはじめて読むものですが、
ああ、うまいな。というくらいの作品でした。



というわけで、その理由を私より百倍正確に指摘してくれるであろうニーチェ。
昔、読んだニーチェの『悲劇の誕生』を少し読み返しました。
(ギリシア悲劇を読まないうちに『悲劇の誕生』を読んでいたのは
明らかに私の失敗だけれど、別に読んでなくても『悲劇の誕生』は楽しく読み通せます。)


ニーチェのエウリピデスの評価はもちろん低いです。



ニーチェのエウリピデス評は『悲劇の誕生』の第11、12章に詳しいのですが
私なりにかなり牽強付会にまとめると、
『エウリピデスは悲劇マニア出身で最初に悲劇を作った作家』ということらしいです。



映画マニア出身の映画監督が作った映画に喩えるとわかりやすいかも。
映画マニアの心をくすぐる、過去の作品の引用をちりばめながらも
一般の観客も楽しめる大作を撮る映画監督みたいな感じ。


要するにエウリピデスはスピルバーグみたいな人です。


そういう批評家っぽい一面をもったエウリピデスを
ニーチェはあんまり好きじゃないみたいで、
ギリシア悲劇の死の第一歩しるしたとして糾弾しています。
確かに、ニーチェの指摘は納得いくものがあります。
悲劇マニアの作品として捉えれば、


『タウリケーのイーピゲネイア』は面白いんじゃないでしょうか。

タウリケーのイーピゲネイア (岩波文庫)




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ラベル:エウリピデス
posted by 信州読書会 宮澤 at 11:09| Comment(0) | ギリシア古典 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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