『アンドロマック』あらすじ
トロイアを落城させたエピール国の国王ピュリスは、
トロイアの王へクトールを惨殺し、その妃であるアンドロマックと息子をエピール国に幽閉する。
ピュリスは、いつのまにか美貌のアンドロマックの虜になり
求愛するが、亡き夫に操を立てるアンドロマックに拒絶される。
ピュリスの婚約者でギリシアから来たエルミオーヌは、
ピュリスの寵愛するアンドロマックに嫉妬している。
ピュリスはたまりかねて、アンドロマックに妃になるか息子ともども死ぬか
どちらかを選べと脅迫し、息子の将来を案ずるアンドロマックは
しぶしぶ結婚することに同意するが、婚礼の祭壇で自殺しようと密かに誓う。
ピュリスから婚約を一方的に破棄させられたエルミオーヌは狂乱し、
彼女を愛している同郷のオレストにピュリスを暗殺するように命ずる。
ピュリスとアンドロマックの婚礼の祭壇でオレストは、ピュリスを暗殺する。
エルミオーヌはピュリスの遺骸の上で自殺を遂げる。オレストも狂気に沈む。
結果、エピールは女王アンドロマックの支配下になる。
最近、岩波文庫で重版がかかりました。ラシーヌははじめて読みました。
エウリピデスの『アンドロマケー』を下敷きにした戯曲だそうで
計算し尽くされてできた悲劇で、かなり面白いです。
片思いの連鎖のたどって景気よく人が死んでいくというとんでもない作品。
訳者の渡辺守章の解説はロラン・バルトのラシーヌ論を
たくさん引用していて、丁寧な解説でありながら、なんか偏っています。
もう少しほかの研究家の解釈もとりいれてほしいです。
エルミオーヌはオレストに愛するピュリスを殺すように命じながら、
実際に暗殺したことをオレストに報告にされると
「殺せとは誰がいった!」ととんでもない返事をします。
「恋に狂った女のいうことなど 真に受けてよいものか!」
とまでいわれてしまいます。トホホなオレスト。
こういう会社の上司たまにいます。
居酒屋の席で部下に、期待を持たせる約束しておいて、
「酔っ払った上司のいうことなど 真に受けてよいものか!」
と翌日の会社の会議で怒り出す上司。唖然とする部下。
酒席の勢いはどこへやら。最悪のパターン。
そんなくだらないことを思い出しました。
最近ギリシア悲劇の世界にはまってきました。
いままで読もうとも思わなかったセネカやエウリピデスが愛らしく思えます。
格調高い悲劇で、お薦めです。
フェードル アンドロマック (岩波文庫)
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