信州読書会 書評と備忘録

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2013年06月10日

年月のあしおと(上下) 広津和郎 講談社文芸文庫

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『年月のあしおと』は
ツルゲーネフが「人生の幸福とは何ぞや」と訊かれて
「悔恨なき怠惰」と答えたというエピソードに
感銘を受け、またそのように生きた広津和郎の自伝。


泉鏡花、永井荷風、宇野浩二、葛西善蔵、芥川龍之介の
生の姿が活写されている美しい本である。特に宇野浩二発狂場面は泣ける


私が一番すきなのは早稲田在学時代の広津和郎が接した島村抱月のくだりだ。
当時、松井須磨子との恋愛で浮名を流していた島村抱月が講義でもらした言葉。


「近頃はデカダンという言葉がはやる。しかし、我々の生活を顧みると、やはり何処かにディケイしたものがある。例えば、知人から手紙を貰う。返事を書かなければという思いの中に、つい書けず翌日になる。翌日には、又新しい手紙が来る。それにも返事を書かなければならないと思ううちに、又書けず過ぎてしまう。それが毎日々々と積み重ねられて行き、心の負担になりながら一年、二年と年月が経って行く。手紙一つでもその通りです。そのほかいろいろなことがその手紙が負担になって行くように、心の負担になりながら、年月を通してわれわれをがんじがらめに身動きできないようにして行く」

広津和郎はこのような弱々しい言葉を吐く島村抱月に『何か深い真実』を感じ
島村の顔を見て感じていることが、彼の教える美学よりもずっと心に入ってきたという。


義理にがんじがらめ縛られ、生き難い人に、自由な風を吹き込んでくれる本。
特に手紙やメールの返事を書けない人にお薦め。

年月のあしおと〈上〉 (講談社文芸文庫)

年月のあしおと (下) (講談社文芸文庫)

続 年月のあしおと〈上〉 (講談社文芸文庫)

続 年月のあしおと〈下〉 (講談社文芸文庫)


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ラベル:広津和郎
posted by 信州読書会 宮澤 at 13:12| Comment(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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